ブリ

ブリ（鰤）とは

ブリは、スズキ目アジ科に属する海水魚で、北西太平洋に広く分布する回遊性の大型肉食魚です。日本では重要な食用魚として、古くから各地の文化や産業に深く関わってきました。

形態

成魚は最大で全長150cm、体重40kgに達しますが、一般的には全長1m、体重8kg程度です。体は紡錘形で細長く、背は暗青色、腹は銀白色をしています。体側には黄色の縦帯があり、細かい鱗で覆われています。

同属のヒラマサと似ていますが、ブリは上顎の後端が角張っていること、胸鰭が腹鰭とほぼ同じ長さであること、体が平べったくないことなどで区別できます。また、ブリは北西太平洋にのみ分布するため、他地域ではヒラマサとの混同は少ないです。

生態

ブリは、東シナ海からカムチャツカ半島、ハワイまでの北西太平洋に分布します。主に日本海と北海道から九州の太平洋岸に生息し、群れを作って水深100m程度の中層から底層を回遊します。回遊魚であり、春から夏には沿岸域に北上し、初冬から春には沖合に南下します。温暖な海域では回遊せずに定着することもあります。肉食性で、小魚、甲殻類、頭足類などを捕食します。

生活史

産卵期は東シナ海南部で2-3月、九州近海で4-5月です。卵は球形で浮遊性で、孵化した仔魚は表層でプランクトンを食べて成長します。春になると、数センチの稚魚は流れ藻に寄り添って生活します。この時期の稚魚はモジャコと呼ばれ、養殖用種苗として利用されます。稚魚は小型甲殻類を食べ、成長すると小魚を食べるようになります。秋に外洋へ出て本格的な回遊を始めます。

名称

標準和名「ブリ」の由来には諸説あります。一説には、脂が多いことから「アブラ」が転じて「ブリ」になったと言われています。漢字の「鰤」は、中国では別の魚を指す言葉でしたが、日本では、師走に脂がのることから「師」という字を当てたとする説があります。中国語では、日本の「鰤」の漢字を借りてブリを指すほか、多くの別名があります。

出世魚

ブリは成長によって名前が変わる出世魚としても知られています。各地で異なる呼び名がありますが、一般的には以下のように変化します。

関東: モジャコ → ワカシ → イナダ → ワラサ → ブリ
北陸: コゾクラ → フクラギ → ガンド → ブリ
* 関西: モジャコ → ツバス → ハマチ → メジロ → ブリ

通常、80cm以上のものをブリと呼びますが、地域によっては、体重によって区別することもあります。養殖ものはハマチ、天然ものをブリと区別することもあります。

漁業

ブリは、一本釣り、延縄、定置網、旋網など、様々な漁法で漁獲されます。近年では、ルアーフィッシングの対象としても人気があります。また、海水温の上昇に伴い、北海道での漁獲量が増加しています。

養殖

ブリの養殖は、主に西日本の沿岸で行われています。春に流れ藻についた稚魚（モジャコ）を捕獲し、生簀で育てます。養殖ブリは、出荷時期を調整できるため、安定した供給が可能です。養殖技術の進歩により、天然ものと遜色のない品質のブリが生産されています。近年では、餌にカボスなどを加えて風味を良くする工夫もされています。

食材

ブリは、冬に脂がのって美味しくなることから「寒ブリ」と呼ばれ珍重されます。刺身、カルパッチョ、焼き物、煮物など、様々な調理法で楽しめます。特に富山県では、年末年始に食べる習慣があり、贈答品としても用いられます。

その他

ブリは、多くの自治体で「県の魚」や「市の魚」に指定されています。また、ブリの養殖に成功した人物や、ブリを題材にした芸術作品も存在します。

養殖の現状と課題

近年、養殖業は大きく変化しました。外海での養殖やペレット飼料の導入により、品質が向上し、環境負荷も低減されました。しかし、養殖魚に対するイメージを払拭し、安全で美味しい養殖ブリを消費者に普及させることが課題です。また、味の調整やブランド化によって、高付加価値化も進められています。

食材としての魅力

ブリは、その多様な調理法と地域色豊かな食文化に彩られた魅力的な食材です。刺身はもちろんのこと、加熱することでまた違った風味と食感を楽しめます。地域によっては、特有の食べ方があり、ブリを通してその土地の文化や歴史を垣間見ることができます。冬の味覚としてだけでなく、一年を通して楽しめる食材として、今後も人気を集めるでしょう。

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