天保義夫

天保義夫（てんぽ よしお）

天保義夫は、1924年4月25日に福岡県で生まれ、1999年12月30日に75歳で亡くなった、日本のプロ野球選手です。彼は主に投手として知られ、特に独自に習得したナックルボールがその名を広めました。阪急ブレーブスでの選手生活を通じて、彼は多くのファンに愛され、プロ野球界に貢献した選手の一人です。

経歴

天保は豊国商業高校を卒業後、1942年に阪急ブレーブスに入団しました。彼の名が広まったのは、1943年5月2日に行われた南海戦でのノーヒットノーランの記録がきっかけです。同年には11勝を挙げ、防御率は2.01でリーグ8位という成績を収めました。しかし1944年、工場での勤労奉仕中に事故に遭い、右手の中指と薬指、左手の人差し指と中指の合計4本の指先を失いました。これにより、彼のキャリアは一時厳しいものとなりました。

戦後、天保は野球界に戻ることを決意します。指先の欠損という試練を乗り越えるため、彼はナックルボールの習得に取り組みました。家の押し入れに布団を積み、2-3メートルの距離から布団に向かって全力投球をするトレーニングを続けました。指からは血が流れ、布団は赤く染まるほどの努力を重ね、ついにはナックルボールを習得し、再びプロ野球界に復帰することができました。

1946年からは連続して2桁勝利を挙げ、阪急の主戦投手として西本幸雄や今西錬太郎などと共に活躍しました。特に1948年には19勝22敗、防御率2.33を記録し、1949年には自己最高の24勝を記録しました。この年には巨人との試合で7勝を挙げ、新記録となる対巨人戦8連勝を達成しました。「私がナックルを投げると、青田昇、川上哲治という凄い連中がクルクルと空振りをしてくれるんです。気持ちよかったね」と、自身の投球について回顧しています。

1949年以降も彼は活躍を続け、1950年には18勝を挙げましたが、24敗や防御率3.68など平凡な結果に終わり、以降成績は下降していきました。1953年には規定投球回数未満ながら11勝を記録しましたが、その後は活躍できず、1957年に選手を引退しました。

引退後の活動

引退後、天保は阪急のコーチとして長い間若手選手の育成に尽力しました。彼の情熱と指導力は多くの選手に影響を与え、1986年には阪急リトルブレーブスで小・中学生の指導にも参加しました。

1999年12月30日、天保は肺気腫により生涯を閉じました。彼の死は多くのファンや選手たちに惜しまれました。

選手としての特徴

天保は「忍者投法」と称される独特な投球スタイルを持ち、その全身を使ったダイナミックなフォームが特徴です。ナックルボールは通常3本の指で投げるものですが、彼は指端を失った薬指を使わず、人差し指と中指の2本で投げるという技術的な挑戦をしています。投球中には帽子が飛ぶことが多く、彼の写真には帽子をかぶった姿が一つもないと言われています。

人物評価

著書『人物阪急球団史』では「阪急の球団史を語る上で、最も阪急を愛し、最も功績が讃えられるべき人」と述べられています。1988年の阪急の身売り時には、「ブレーブス魂は生きている。それが私の支えです」と感情をこめて語っています。

天保義夫は、彼の不屈の精神と多大な業績から、今なお多くの野球ファンに支持されています。

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