天光丸

天光丸（てんこうまる）

天光丸は、平安時代に作られたとされる日本刀（太刀）であり、その優美な姿から重要美術品に認定されています。現在は大阪府羽曳野市の壺井八幡宮に所蔵されており、「天光丸太刀」や「天光丸の太刀」とも呼ばれています。

概要

天光丸は、平安時代の刀工・伯耆国安綱によって作られたと伝えられています。安綱は、直刀から反りのある湾刀へと移行する平安時代中期に活躍した刀工として知られ、名刀「童子切」を作刀したことでも有名です。

『河内名所図会』によれば、天光丸は安綱が作刀したとされる「鬼切丸（童子切）」と対になる「雌雄の太刀」であるとされています。これは、両刀が同じ鉄を用いて作られたことを示唆しています。

天光丸という号の由来は、『羽曳野市史』第4巻に詳しく記されています。それによると、多田太郎が金剛山の麓でこの太刀を紛失してしまいます。数年探し続けたものの見つからなかった太刀は、ある夜、松山八郎右衛門友澄という人物によって発見されます。土中から光を放っていた場所を掘り起こすと、そこから太刀が現れました。太刀は以前と変わらず凜とした輝きを放っていたため、この太刀を石川兵衛判官代義清に献上したところ、義清は大いに喜び、「天光丸」と名付け、秘蔵したと伝えられています。また、多田満仲から源氏の宝刀として、源頼信、源義家へと伝わったともされています。

1935年（昭和10年）10月14日、天光丸は重要美術品に認定され、その価値が公的に認められました。現在では、大阪府羽曳野市の壺井八幡宮に大切に保管されています。

刀身

天光丸の刀身は、以下の特徴を有しています。

刃長： 76.8センチ
反り： 2.5センチ
茎長： 20.0センチ
造り： 鎬造、庵棟
姿： 腰反りが高く、小鋒に結ぶ優美な太刀姿
鍛え： 板目に杢目が交じり、肌立つ
刃文： 乱れた小乱れが主調
茎： 生ぶ茎、先栗尻、目釘孔二、目釘孔上棟寄りに「安綱」と二字銘
鎺： 桐紋と二引き両の紋が彫刻

これらの特徴から、天光丸は平安時代の太刀の特徴を色濃く残しており、美術品としての価値が高いことがわかります。特に、腰反りの高い優美な姿や、板目と杢目が交じり合った鍛え肌、乱れた小乱れの刃文は、安綱の作刀技術の高さを物語っています。

まとめ

天光丸は、平安時代に作られた名刀であり、その歴史的背景、伝承、刀身の美しさなどから、多くの人々に愛され続けています。重要美術品として認定されていることからも、その価値の高さが伺えます。現在も壺井八幡宮で大切に保管されており、日本の刀剣文化を語る上で欠かせない存在となっています。

参考文献

広井雄一『日本刀重要美術品全集 第3巻』青賞社、1985年
羽曳野市『羽曳野市史 第4巻 史料編』羽曳野市、1981年
福永酔剣『日本刀大百科事典 第3巻』雄山閣出版、1993年
春日大社『最古の日本刀の世界 安綱・古伯耆展』春日大社、2019年

関連項目

日本刀一覧

外部リンク

* 壺井八幡宮（公式サイト）

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