天国からのラブレター

『天国からのラブレター』は、光市母子殺害事件の遺族である本村洋氏が、亡くなられた妻・弥生さんとの間で交わされた書簡をまとめた書籍です。特筆すべきは、この書籍が単なる手記ではなく、二人の間で実際にやり取りされた手紙をベースに構成されている点です。著者としては、本村洋氏と弥生さんの共著という形が取られており、弥生さんの生きた証とも言えるでしょう。

書籍は新潮社から2000年に出版され、2007年には文庫版も刊行されました。さらに同年には、山口円監督によって映画化もされています。書籍の内容は、主に弥生さんが書いた手紙と、それに挟み込む形で本村洋氏が解説を加えるという形式で展開されます。手紙は、二人が交際を始めた1994年の冬から、事件当日の1999年4月14日まで、時系列順に掲載されています。冒頭には、事件の一ヶ月前から弥生さんが長女の成長を記録した「パパとママの交換日記」が収録されており、その後、二人が交際を始めた当初の手紙へと続きます。これにより、二人の関係が深まっていく様子が、読者にもありありと伝わってきます。

手紙の内容は、初々しい交際当初のやり取りから、本村洋氏が広島大学に進学したことによる遠距離恋愛、弥生さんの妊娠、そして結婚を経て、二人が親密になっていく様子が描かれています。手紙の中には、弥生さんがダイエットに励んだり、長女の妊娠中に子供の名前を考えたりといった、ごく普通のカップルの日常的な出来事が多く綴られています。書籍には、家族写真が多数掲載されており、事件前の本村家の幸福な様子を強く印象づける構成となっています。

しかしながら、本書は手紙をそのまま掲載しているため、未成年時の飲酒といった法に触れる行為や、性生活に関する露骨な描写、さらに友人たちの実名を挙げての陰口やプライバシーの暴露など、書籍としてはかなり過激な内容が含まれているのも事実です。これらの点については、批判的な意見も少なくありません。文庫版のあとがきでは、本村洋氏自身も、弥生さんの友人や親族に対して、不必要な情報が伝わってしまうことへの懸念を表明し、謝罪の言葉を述べています。しかし、本文の内容については、匿名化などの修正は加えられませんでした。書籍に収録された手紙は、ほぼ全て弥生さんが存命中に書かれたものであるため、光市母子殺害事件についての直接的な記述はほとんどありません。事件については、ごくわずかに触れられている程度に留まっています。

この書籍を通じて、読者は本村夫妻の個人的な生活や感情に深く触れることになり、事件の悲劇がより一層際立つことになります。夫婦の愛の軌跡と、悲劇的な結末が描かれたこの書籍は、多くの読者の心を揺さぶる作品と言えるでしょう。

書誌情報

本村洋・本村弥生『天国からのラブレター』新潮社、2000年。ISBN 978-4-10436501-2
本村洋・本村弥生『天国からのラブレター』（新潮文庫）新潮社、2007年。ISBN 978-4-10130551-6

映画

キャスト
須賀貴匡 （本村洋）
中村ゆり （宮地/本村弥生）
高橋ひとみ （宮地幸代）
五代高之 （本村永輔）
根岸季衣 （本村美枝子）
スタッフ
製作総指揮：奥山和由
脚本・監督：山口円
企画：チームオクヤマ
エグゼクティブプロデューサー：谷口則之
主題歌
Every Little Thing 『恋文』

関連項目

光市母子殺害事件
全国犯罪被害者の会

外部リンク

天国からのラブレター - allcinema
* 天国からのラブレター - KINENOTE

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