天城越え (曲)

天城越え



「天城越え」は、1986年7月21日にリリースされた石川さゆりシングルで、彼女の代表曲の一つとして知られています。この曲は、第28回日本レコード大賞で金賞を受賞し、その圧倒的な歌唱力と情念を込めた歌詞で、多くの人々の心に深く刻まれました。

楽曲制作の背景



「天城越え」は、作詞吉岡治作曲弦哲也、編曲を桜庭伸幸が担当しました。1985年、3人は天城湯ヶ島町(現在の伊豆市)の温泉旅館・白壁荘に2泊滞在し、楽曲制作に取り組みました。吉岡は、旅館周辺を散策する中で歌詞の原案を練ったと言われています。この曲は、静岡県伊豆半島の天城山を舞台にしたご当地ソングであり、歌詞に登場する浄蓮の滝には歌碑も設置されています。

当時、カラオケブームが巻き起こる中、「石川さゆりにしか歌えない難易度の高い作品を」というコンセプトで制作されました。作曲を担当した弦哲也は、石川が初めて歌詞を見た際、「こんな情念の籠もった歌は歌えない」と戸惑っていたと語っています。しかし、石川は歌詞と真摯に向き合い、解釈を深め、最終的には「天城越え」を自分のものにしていったと言います。

幅広い支持



2008年には、大リーグ選手のイチローが打席曲として使用したことでも話題になりました。イチローはシーズンオフに紅白歌合戦で「天城越え」を聴き、「記録など、さまざまなものを越えたい」という思いから使用を決めたそうです。その後、石川はマリナーズのホームゲームに招待されました。ただし、石川本人は「野球音痴」であると述べています。

第一興商の通信カラオケDAMのデータによると、「天城越え」は、サービス開始の1994年4月から2018年までの集計で、演歌部門で最も歌われた曲であり、全楽曲の中でも4位にランクインしています。

NHK紅白歌合戦での披露



「天城越え」は、年末恒例のNHK紅白歌合戦で、1986年の第37回に初披露されました。その後も、1997年、1999年2002年2005年と複数回にわたり披露され、2007年以降は「津軽海峡・冬景色」と交互に隔年で歌唱されています。また、1986年2002年2016年2018年には紅組トリを務め、これは石川の「津軽海峡・冬景色」と並んで、紅組歌手として最多のトリ回数記録です。

2005年に実施された「スキウタ〜紅白みんなでアンケート〜」では、紅組の16位に選ばれました。

収録曲



1. 天城越え
2. 隠れんぼ

カバー



「天城越え」は、多くのアーティストによってカバーされています。以下に代表的な例を挙げます。

舟木一夫 (1997年)
水森かおり (2000年)
中森明菜 (2007年)
石原詢子 (2009年, 2014年)
たかはし智秋 (2009年)
マーティ・フリードマン (2009年)
永井裕子 (2009年)
森進一 (2009年)
misono (2010年)
水田竜子 (2011年)
秋川雅史 (2012年)
葛城ユキ (2014年)
北原ミレイ (2014年)
杜このみ (2014年)
PENICILLIN (2015年)
大江裕 (2016年)
小岩井吉乃(水瀬いのり) (2017年)
竹村こずえ (2017年)
市川由紀乃 (2017年)
上沼恵美子 (2018年)
翠千賀 (2019年)
前川清 (2019年)
ハラミちゃん (2020年)
花井美春 (2022年)

これらのカバーからも、「天城越え」が幅広い世代に愛され、多くのアーティストに影響を与えていることがわかります。


「天城越え」は、石川さゆりの歌唱力と、吉岡治の情念深い歌詞、弦哲也の心に響くメロディーが融合した、まさに不朽の名曲と言えるでしょう。今後も長く歌い継がれていくことでしょう。

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