天山 (航空機)

天山（B6N）

天山（てんざん）は、日本海軍の艦上攻撃機で、九七式艦上攻撃機の後継機として開発されました。機体の略称はB6Nであり、中島飛行機が設計と生産を担当しました。連合国軍のコードネームは「Jill（ジル）」です。

開発の歴史

1939年10月、海軍は九七式三号艦攻の後継機として「十四試艦上攻撃機計画要求書」を中島飛行機に提示しました。要求された主な性能は以下の通りです：

• - 最高速度：463 km/h以上
• - 航続距離（雷装時）：3,334 km以上
• - 発動機：護または火星

この要求に基づき、中島飛行機は開発を開始し、1940年5月から本格的な設計に取り組みました。開発中の機体は当初「十四試艦上攻撃機」と呼称されましたが、1943年に命名基準が変更され、「攻撃機は山の名前にする」という規定に基づき、佐賀県の天山にちなんで名付けられました。

発動機と実用試験

開発初期には、搭載エンジンの選定が問題となりました。海軍は推奨された火星エンジンを非力として却下し、中島製の護エンジンを搭載することを決定しました。しかし、初期の試作機はエンジンのトルクや振動の問題で実用試験が難航しました。特に、タフな試験飛行の際に魚雷の追尾や着艦時の問題が明らかになり、改善が求められました。

1943年1月、海軍はB6N1の130機の生産を指示し、同時に新型エンジンに切り替えたB6N2の開発も始められました。B6N1とB6N2は共に、エンジンの信頼性や航続距離の向上が確認され、量産が行われました。

設計の特徴

B6Nシリーズは、胴体が非常に太く、視界改良のために操縦席が調整可能でした。主翼は空母のエレベーターに収まるサイズに設計され、最高の高揚力を発揮できるフラップが装備されていました。また、強度設計にも工夫がされており、機体の重量に見合った主脚が取り付けられていました。

武装と防弾機能

天山は主に航空魚雷を搭載し、後上方銃座に加えて後下方銃座も設けられ、敵機からの攻撃に備えていました。防弾装備としては、いくつかの消火装置が取り付けられましたが、実際には不十分であったと言われています。

実戦と戦果

1943年7月、B6N1が正式に配備され、同年11月には実戦への投入が始まりました。初めての出撃では、米機動艦隊への夜間雷撃を行い、一時的な戦果が報告されましたが、実際の損害状況は厳しかったと言われています。特に1944年のマリアナ沖海戦やフィリピン攻防戦では、大きな損害を被りながらも、その後も戦局の変化に応じて運用されました。

戦後の展開

戦後、天山は一部が米軍に接収され、他の機体と共に展示されました。現存する天山は少なく、愛媛県にはプロペラの保存が行われています。天山は艦上攻撃機としての役割を全うし、日本の航空史に名を残した機体となりました。

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