天幕駅

天幕駅：石北本線に花開いた歴史と周辺環境

北海道上川郡上川町字天幕に存在した天幕駅は、北海道旅客鉄道（JR北海道）石北本線の駅として、1929年11月20日に開業、2001年7月1日に廃止されました。

開業から廃止までの歴史

1929年の開業当初は、石北西線の駅として出発しました。その後、線路名称の変更や、1935年の天竜鉱山精錬所の建設・閉鎖といった地域産業の変化にも寄り添う形で歴史を刻みました。国鉄時代には、公衆電報や荷物、貨物の取扱いを経て、1975年には旅客駅へと移行。1983年には無人化され、1986年には1日1往復のみの停車となりました。2000年には交換設備が撤去され、翌2001年には営業休止を経て廃止という運びとなりました。

駅名の由来：天幕と三次郎、そして歴史的背景

駅名の由来については、2つの説が有力視されています。1つは、明治期の中央道路（現在の国道39号）建設時に設置された天幕に由来するという説。測量用テント説や工事事務所説など、いくつかのバリエーションが存在します。もう1つは、地元で狩猟生活を送っていた「天幕三次郎」という人物に由来するという説です。

天幕三次郎こと清水三次郎は、中央道路建設時期ごろから当地に住み着き、私設駅逓の役割も担っていました。鉄道建設部長であった田辺朔郎と交流があったとされ、駅名に影響を与えた可能性も示唆されています。田辺は石北本線開通後も三次郎を忘れず、その遺族に香典を送ったという逸話も残っています。

天幕三次郎の生涯

天幕三次郎は、明治23年頃より留辺志部川畔で狩猟生活を送っていました。未亡人との同棲生活を経て、1903年には駆け落ち。その後、熊害に遭い、若くして亡くなりました。彼の生涯は、開拓時代の厳しい生活と、人々の交流、そして運命のいたずらを感じさせる物語です。

駅の構造と利用状況

廃止時点では、相対式ホーム2面2線の交換駅でしたが、廃止直前に交換設備が撤去され、1面1線の単式ホームとなっていました。旅客数は、年々減少していったと推測されます。

廃止後の周辺環境

駅舎は解体されましたが、信号関係の建物は現在も残っています。また、旭川支社により記念碑が設置されています。かつての構内を通る本線の線路は、現在でも当時のまま残されている貴重な遺構です。周辺には国道273号や産業廃棄物処理施設などがあります。

まとめ

天幕駅は、短いながらも地域に密着した歴史を持つ駅でした。駅名の由来にまつわる物語、そして天幕三次郎の生涯は、この地の歴史を深く知る上で重要な要素です。現在、駅舎は残っていませんが、周辺に残る遺構や記念碑は、かつてこの地に存在した天幕駅の歴史を語り継いでいます。 また、1948年の航空写真からは、貨物ホームや側線なども確認でき、当時の一般的な駅構造であったことがわかります。天幕駅の存在は、石北本線の歴史、そして開拓時代の北海道の生活を垣間見れる貴重なものです。

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