天徳 (前李朝)

天徳（てんとく）は、ベトナムの前李朝、万春国を建国した李賁（りほん）が使用した元号であり、544年から548年までの5年間用いられました。この元号は、李賁が梁からの独立を宣言し、自らを南越帝と称した際に定められたもので、万春国の成立と国家としての新たな出発を示す重要な意味を持っています。また、文献によっては「大徳」と表記されることもあります。

天徳の時代背景

当時、ベトナムは中国の梁王朝の支配下にありましたが、李賁はこれに反旗を翻し、542年に挙兵しました。彼の率いる軍は梁軍を破り、544年に万春国を建国、李賁は皇帝として即位し、天徳を元号と定めました。この出来事は、ベトナムの独立運動における重要な一歩であり、ベトナム史において特筆される出来事です。

史料における記述

『大越史記全書』には、天徳元年（544年）に李賁が南越帝を自称し、元号を定めたことが記されています。また、同書には、天徳4年（548年）までの出来事が記録されており、李南帝（李賁）の治世が辛酉から丁卯までの7年間であったとされています。

元号の表記について

「天徳」と「大徳」のどちらの表記が正しいかについては、研究者の間でも見解が分かれています。『校合本　大越史記全書』では「天徳」の表記が採用されており、「大徳」の表記は校勘されていません。一方、『東亜歴史年表』では「大徳」の表記が用いられています。どちらの表記も誤りではありませんが、史料によって異なっていることに注意が必要です。

参考文献

黎僖ほか撰、陳荊和編校『校合本　大越史記全書（上）』（東洋学文献センター叢刊42、東京大学東洋文化研究所附属東洋学文献センター刊行委員会、1984年）
鄧洪波編　『東亜歴史年表』（台北：台湾大学出版中心，2005年3月） ISBN 9860005184

関連項目

元号一覧 (ベトナム)
他王朝の天徳（曖昧さ回避）

天徳の時代は短いながらも、ベトナムの独立と国家建設に向けた重要な時期でした。李賁の功績と、彼が定めた元号「天徳」は、ベトナムの歴史に深く刻まれています。

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