李賁

李賁（ Lý Bôn ）：万春国の建国者

李賁（リ・ボン、Lý Bôn ）は、6世紀中頃の北ベトナム（現在のベトナム北部）で指導者として活躍し、前李朝を開き万春国を建国した君主です。

生涯

李賁の遠祖は、5世紀頃に中国からベトナムへ移住した貴族の家柄でした。彼は龍興県（現在のタイビン省）出身で、現地の少数民族である俚族の血を引いています。当時、南朝梁の交州刺史であった蕭諮の苛酷な統治に対する民衆の不満が高まっていました。そうした状況下で、徳州監の地位にあった李賁は、大同7年（541年）12月に交州の人々を集めて挙兵し、蕭諮を広州へ追いやりました。

大同8年（542年）春、李賁は交州の政治的中心地であった龍編（現在のバクニン省）を占領し、ここを拠点としました。その後、南朝梁の支配下にあった交州と徳州（現在のベトナム北部）の大部分を制圧することに成功しました。

しかし、大同9年（543年）4月には、チャンパが李賁を攻撃します。この戦いでは、李賁の部下である范修が徳州でチャンパ軍を打ち破りました。

大同10年（544年）1月、李賁は自らを「南越帝」と称し、「天徳」と改元して国号を「万春」と定めました。この時、李南帝という称号が生まれました。

しかし、万春国の成立は長くは続きませんでした。天徳2年（545年）5月、南朝梁が派遣した交州刺史楊瞟、交州司馬陳霸先、定州刺史蕭勃らの軍隊が、朱䳒県と蘇瀝江の河口に展開し、李賁の軍を破りました。梁軍に包囲された李賁は、嘉寧城に撤退せざるを得ませんでした。天徳3年（546年）1月、梁軍が嘉寧城を攻略すると、李賁は屈獠洞の少数民族のもとに逃れました。同年9月、李賁は2万人を率いて典澈湖一帯に駐屯し、戦艦を建造していましたが、陳霸先率いる部隊の夜襲を受け、再び屈獠洞へ逃げ込みました。

天徳5年（548年）に李賁が死去すると、彼の兄である李天宝が残党2万人を集め、九真郡で南朝梁に対する抵抗を続けました。李天宝は徳州に進攻し、さらに北上して愛州を包囲しましたが、陳霸先の軍によって撃破されました。

大宝元年（550年）、南朝梁で侯景の乱が発生し国内が混乱すると、陳霸先の軍は北上しました。その結果、交州周辺に軍事的な空白が生じ、前李朝は北ベトナムで勢力を回復する機会を得ました。承聖4年（555年）に李天宝が病死すると、李賁の部下であった趙光復と李仏子が北ベトナムを分割統治するようになりました。太建3年（571年）に趙光復が亡くなると、李仏子が北ベトナムを統一し、前李朝の勢力を再び拡大しました。しかし、仁寿2年（602年）、前李朝は隋の侵攻によって滅亡しました。

李賁の生涯は、ベトナム北部における独立運動の象徴として、後世に語り継がれています。

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