天気輪

天気輪（てんきりん）について

天気輪は、宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』に登場する、彼自身が造り出した言葉とされています。この言葉は具体的に何を意味するのかについては多くの解釈があり、主に仏教に由来する建物、宗教的理念、および天文現象に関連づけられています。

『銀河鉄道の夜』における天気輪の柱

『銀河鉄道の夜』の第5章は「天気輪の柱」と題されており、この内容は第6章「銀河ステーション」の先触れとなっています。この天気輪の柱は、物語の中で牧場の後ろにある丘の頂上に位置しています。主人公のジョバンニは、この柱のもとに身を投げ出して夜空と町の灯りを眺める場面が描かれています。

天気輪の柱は、最初は「漠然とした三角標の形になり、しばらく蛍のようにちらちらと光っては消え、また現れる」という幻想的な描写が続いた後、最終的には動かなくなり、空の草原に立つことになります。その後、どこかから「銀河ステーション」という声が聞こえてくる場面も印象的です。

天気輪の柱に関する考察

この天気輪が仏教由来の建築物であるとする見解があり、評論家の原子朗はその表現が仏教に基づくものである可能性を指摘しています。彼は、これはお天気柱や転法輪、または車塔婆や後生車といった仏教的な構造物に結びついていると述べ、柱の回転する輪が賢治の輪廻思想を示すシンボルであることを示唆しています。お天気柱は、東北地方の墓地や村境に見られる仏教的な設備で、農耕に恵みをもたらす天候を祈ったり、死者を弔ったりするために設置されたものです。形そのものは、石や木製の柱に回転可能な輪を取り付けた構造をしており、祈祷者はその輪を回して祈りを捧げます。

さらに、研究者の垣井由紀子は天気輪の柱は五輪塔からインスピレーションを受けたのではないかと考えています。賢治が晩年に五輪峠の風景を描いた詩、「病技師〔二〕」において「五輪塔」を「天気輪」と修正したことがその根拠です。

さまざまな関連考察

他にも、天気輪に関する考察として、法華経の七宝の塔やヤコブの梯子といった宗教的な概念との関連や、太陽柱や月の暈、きりん座、北極軸、日時計などの天文現象との関連が指摘されることもありますが、正確な解釈は現在のところ決まっていません。多くの説が混在しているため、天気輪が何を象徴するのかは未だに興味深い謎のままと言えるでしょう。

関連作品

また、天気輪は他の作品にも影響を与えており、テレビアニメ『ガサラキ』の第3話では「天気輪」というタイトルが用いられています。これにより、賢治の表現が後の文化にどのように影響を与えたかを考えることも、興味深い研究テーマとなっています。

もう一度検索