天津敏

天津 敏（あまつ びん）

天津敏（1921年2月16日 - 1979年7月24日）は、日本を代表する悪役俳優として知られる。本名は天都 敏、宮城県石巻市出身の彼は、182cmの身長と魅力的なドスの利いた声、鋭い眼光を持ち合わせ、映画やテレビドラマで数々の敵役を演じ、特にその存在感で観客を惹きつけた。

生い立ちと教育

彼は教育者一家に生まれ育ち、両親や兄弟も全て教職に従事していた。少年時代は歌と水泳が得意であったが、後に宮城県師範学校を卒業し、教員として働き始める。第二次世界大戦中は海兵団の少年兵教官として戦時の影響を受けつつも、教育の大切さを実感し続けていた。しかし、戦後は教育のあり方に疑問を持ち、教職を離れた。

映画界への入り

1953年、32歳で東宝のニューフェイスとして映画界にデビュー。映画では脇役が中心だったが、その後、1955年にTBSのオーディションに合格し、テレビドラマへの出演を果たす。彼のキャリアを大きく変えたのは、1959年のテレビドラマ『豹の眼』での悪役の出演だった。この作品を皮切りに、様々な作品で主に悪役として活躍することになった。

代表作と功績

特に有名なのは、忍者ブームを巻き起こした『隠密剣士』シリーズである。ここでの風魔小太郎役は彼の当たり役となり、視聴者の記憶に強く刻まれた。また、映画『忍者狩り』で演じた闇の蔵人役も評価され、任侠映画へと活動の場を広げることができた。時代劇でも多くの悪役を演じ、特に『水戸黄門』や『仮面の忍者 赤影』での印象的な演技が知られている。

天津の表現力は彼が悪役に留まらず、善人役でも活躍できる実力を示している。映画『黒い画集』の登山家役や『喜劇　駅前弁当』の駅員役など、さまざまな役柄を演じ、その幅広い演技力が賞賛された。

人物と私生活

天津敏は、舞台裏での優しさでも知られていた。共演者である金子吉延は「怖そうな顔だが、とても優しい人」だったと記している。また、プロデューサーの野木小四郎も彼の穏やかさを称賛し、怒る姿を見たことがないと語っている。共演者たちとの良好な関係は、天津の人柄を物語っている。

最期と遺作

1979年6月、脳内出血で倒れた天津は、同年7月24日に心不全で他界した。58歳の若さでの死去は多くの人々に衝撃を与えた。彼の遺作となった映画『武士道ブレード』は、1981年に公開された。

まとめ

天津敏は、悪役という枠を超えた幅広い演技力で日本のエンターテインメント界に多大な影響を与えた。彼のキャリアは、映画とテレビの両方で不朽の名作を生み出し続け、その存在は今も多くのファンに愛されている。

もう一度検索