天狗岩用水

天狗岩用水とは

天狗岩用水は、群馬県中南部を流れる農業用水路です。利根川を水源とし、渋川市から前橋市、高崎市、玉村町へと続くこの水路は、地域農業の発展に大きく貢献してきました。

この用水路の最大の特徴は、その名の由来にもなっている天狗伝説です。開削工事の際、難航していた巨石の処理を、現れた老翁の助けによって成し遂げることができ、その老翁が天狗であったと伝えられています。

歴史

天狗岩用水の歴史は、江戸時代初期に遡ります。総社藩主の秋元長朝が、慶長7年（1602年）に着工し、2年後の慶長9年（1604年）に完成させました。当初は、現在の吉岡町漆原付近から取水し、高崎市上滝町付近までを流れていました。

その後、関東代官の伊那忠次によって、玉村方面への延長工事が行われ、慶長15年（1610年）に完成しました。これにより、用水路はさらに広範囲を潤すことになり、地域農業の基盤が確立されました。また、この時期には取水口の拡張や用水路の拡幅も行われ、より効率的な水利用が可能となりました。

明治時代に入ると、天狗岩用水は発電にも利用されるようになります。明治27年（1893年）には、群馬県で最初の営業発電所が、天狗岩用水を利用して開業しました。その後も、幾多の災害に見舞われながらも、その都度復旧工事が行われ、現在に至ります。

近年の動き

近年では、昭和57年（1982年）に県営天狗岩発電所が完成し、水力発電による電力供給にも貢献しています。さらに、令和2年（2020年）には、その歴史的価値が認められ、世界かんがい施設遺産に登録されました。

流路

天狗岩用水は、利根川を水源とし、佐久発電所放水路トンネル及び坂東大堰から取水しています。そこから、天狗岩用水、広桃用水、大正用水に分水されます。本流は、渋川市半田を経て、吉岡町漆原の天狗岩発電所に至り、その後、前橋市総社町を経由し、八幡川と合流します。八幡川と合流した後は、滝川として高崎市を流れ、烏川へと合流します。

五千石堰用水

天狗岩用水から分水される五千石堰用水は、前橋市総社町植野から分岐し、城の内堀、宿場、水田の用水として利用されています。この用水路は、天狗岩用水の開削以前から存在していたと伝えられ、地域の人々の生活に欠かせないものとなっています。

天狗来助伝説

天狗岩用水の名前の由来となった伝説は、用水路の開削工事中に起こりました。巨大な岩が工事を阻み、人々が途方に暮れていたところ、老翁が現れて岩を砕き、水路を拓きました。その老翁は、実は天狗であったと伝えられています。

力田遺愛碑

光巌寺には、天狗岩用水の開削者である秋元長朝の徳を称え、百姓たちが建立した力田遺愛碑があります。この石碑は、天狗岩用水が地域にもたらした恩恵を今に伝える貴重な文化財として、群馬県の史跡に指定されています。

水力発電

天狗岩発電所は、吉岡町に位置する小水力発電所で、天狗岩用水を利用して発電を行っています。最大で540キロワットの電力を発生させ、地域への電力供給に貢献しています。

まとめ

天狗岩用水は、その歴史と伝説、そして地域への貢献度において、非常に重要な存在です。農業用水路としての役割だけでなく、発電や観光資源としても注目されています。この用水路は、先人たちの知恵と努力によって築き上げられ、現代にもその恵みを伝えています。

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