天皇主権

天皇主権についての考察

天皇主権とは、大日本帝国憲法の下で天皇が主権の中心であるとされる概念を指します。この考え方は、西洋の君主主権の考えを日本に当てはめたもので、憲法学における重要なテーマとなっています。特に天皇主権を軸にした憲法学説は「天皇主体説」と呼ばれています。

歴史的背景

1889年に公布された大日本帝国憲法は、翌年の1890年から施行されました。この憲法の第4条には「天皇ハ國ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リテ之ヲ行フ」と明記されており、この一文が天皇主権の根拠となっています。

憲法の解釈は、当初、君権学派によって天皇主権が重視されました。穂積八束や上杉慎吉は、天皇の権威を中心に憲法解釈を行いました。一方で、美濃部達吉や佐々木惣一といった立憲学派は、議会制を重視し、天皇機関説を唱えました。この二つの学派は、天皇の権限に関する見解を巡って度々対立しました。

初期の日本においては、超然主義をかかげる藩閥政治家や官僚たちが君権学派の解釈を支持したため、天皇主体説が幅を利かせました。しかし、1913年には上杉と美濃部の間で行われた天皇機関説論争で、天皇機関説が勝利し、憲法はその解釈で運用されることになりました。

天皇機関説とその後の展開

ところが1935年には天皇機関説事件が発生し、美濃部ら立憲学派が批判されました。その結果、政府は国体明徴声明を発表し、天皇主権を中心とした解釈が公式見解として定められました。この出来事により、天皇機関説は排除され、政府の見解は君権学派の立場にシフトしました。これにより、政府における右翼的勢力や軍人の影響力が増大しました。

しかし、憲法学の学術世界では、天皇機関説が理論的には依然として正当な見解とされていました。戦後、1947年に大日本帝国憲法が改正され、日本国憲法が施行されると、前文及び第1条によって「主権が天皇から国民に移行した」とする国民主権の考え方が議論されました。この見解は八月革命説とも呼ばれ、国民主権の重要性を強調しました。

結論

天皇主権は日本の憲法学において非常に重要なテーマであり、その背景には複雑な歴史が隠されています。具体的には君権と立憲主義の対立があり、それぞれの解釈の違いが日本の政治や社会に与えた影響は計り知れません。天皇主権の考え方は今なお議論を呼んでおり、多くの研究者によって探求されています。

もう一度検索