上杉慎吉

上杉慎吉 - 日本の憲法学者

生涯

生い立ち

上杉慎吉（旧字体：上杉愼吉）は、1878年8月18日に福井県足羽郡福井町（現在の福井市）で生まれました。彼の父、上杉寛二は大聖寺藩の藩医を務めていました。

学生時代

旧制第四高等学校補充科予科を経て、同校を卒業後、東京帝国大学法科大学に進学しました。彼はここで憲法学を学び、天皇主権説を提唱する憲法学の権威、穂積八束から教えを受けました。1903年に法科大学を卒業し、成績が優秀だったため、明治天皇から恩賜の銀時計を授与されました。

憲法学者としての活動

1903年、上杉は東京帝国大学法科大学の助教授に任命されました。この時期、彼は国家法人説の見解を持ち、師である穂積の考え方に対して批判的な立場を取るようになりました。加えて、1906年から1909年にかけてドイツに留学し、ハイデルベルク大学でゲオルク・イェリネックと親しく交流しました。帰国後も彼と手紙のやり取りを続け、イェリネックの死に際しては弔辞を発表しました。

上杉は陸軍大学校や海軍大学校で教授を務め、憲法学の普及に努めた一方、明治大学ではユニークなスタイルの講義を行い、時には物議を醸しました。

天皇機関説との論争

1910年代に入ると、上杉は自らの立場「天皇即国家」や「現人神」の理念を掲げ、美濃部達吉の天皇機関説に対して積極的に批判を行いました。この論争は日本の憲法学や政治思想において重要なテーマとなりました。また、彼は桐花学会を設立し、国家社会主義的な運動にも関与しました。

普通選挙の提唱

上杉は、一君万民論の基に普通選挙の導入を提唱し、政治における国民の参画について考察を深めました。その影響力は、彼の教え子たちを通じて日本の右翼思想や国家主義の運動に大きく寄与しました。

影響と遺産

上杉の思想は、彼の学生たちを通じて国家主義に影響を与えました。有名な右翼団体「興国同志会」は、上杉の弟子たちによって設立され、後に大きな団体へと成長しました。彼らは日本における国家主義的思想の形成に寄与し、さらに帝大七生社などの組織も彼の影響下にあったとされています。

関東大震災とその後

1923年の関東大震災後、上杉は当時の警察の対応について批判的な意見を述べ、その後の社会問題にも関心を寄せました。

健康の悪化と死去

上杉は1929年に肋膜炎で入院し、その後4月7日に亡くなりました。彼は日本の憲法学や社会思想に多大な影響を残し、今日においてもその研究は続けられています。

著作

上杉は多くの著作を残しており、彼の理論や思想は日本の憲法学の礎となりました。代表的な著書には『帝国憲法』や『国体ト憲法ノ運用』などがあります。彼の作品は、今でも研究や教育の場で広く参照されています。

上杉慎吉の業績は、後世の憲法学の発展に寄与し、特に天皇制に関する議論において中心的な役割を果たしました。

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