天石門別神

天石門別神：天皇の宮殿を守る神々

天石門別神（あまのいわとわけのかみ）は、日本神話において重要な役割を担う神々です。複数の氏族の祖神とされており、その出自や役割については、古来より様々な解釈がなされてきました。特に、『古事記』における天孫降臨の記述や、後世の文献である『古語拾遺』、『延喜式神名帳』、『四時祭式』、『祝詞式』などにおいて、その存在と役割が確認できます。

天孫降臨と天石門別神

『古事記』の天孫降臨の記述において、邇邇芸命（ににぎのみこと）が天降る際に、三種の神器と共に常世思金神、天手力男神、そして天石門別神が添えられたと記されています。同書では、天石門別神は別名、櫛石窓神（くしいわまどのかみ）や豊石窓神（とよいわどのかみ）とも呼ばれ、宮殿の門を守る神として位置づけられています。興味深いことに、天孫降臨の段に登場する他の多くの神々は、それ以前の岩戸隠れの段にも登場しますが、天石門別神は岩戸隠れの段には登場しません。この点が、天石門別神の独自性を際立たせています。

天皇の宮殿と天石門別神

古来より、天石門別神は天皇の宮殿の四方の門に祀られ、神祇官の西院では御門巫祭神として祀られて式内社とされていました。これは、天石門別神が天皇の安全と国家の安泰を護る重要な神として位置づけられていたことを示しています。『古語拾遺』には、豊磐間戸命と櫛磐間戸命の二神が神殿の御門を守ったという記述があり、『延喜式神名帳』には、御門の巫（みかむのこ）が祀る神として豊磐窓神と櫛磐窓神が記されています。さらに、『四時祭式』には、5月と12月に行われる四方の門の祭祀が記述され、それが豊磐間戸命と櫛磐間戸命の祭祀であることが示唆されています。『祝詞式』には、その祭祀の祝詞や新年祭の祝詞に、朝夕に御門を厳重に守る神として両神の名が記され、四方の門それぞれに同神が配備されていたことが記されています。これらの文献から、天石門別神が、古くから天皇の宮殿の守護神として重要な役割を担っていたことがわかります。

天石門別神の系譜

天石門別神の系譜については、『古屋家家譜』によると、大伴氏の祖神である高皇産霊尊の子、安牟須比命の三世孫に天石門別安国玉命（あめのいわとわけやすくにたま）がいるとされています。同系譜では、天石門別安国玉主命、大国栖玉命、大刀辛雄命（たちからお）といった別名も記されています。これらの系譜は、天石門別神が特定の氏族と深く結びついていたことを示唆しています。しかし、系譜に関する情報は必ずしも一致しておらず、天石門別神に関する研究は今後も継続していく必要があります。

天石門別神を祀る神社

日本各地には、天石門別神を祀る神社が数多く存在します。代表的な神社としては、櫛石窓神社（兵庫県丹波篠山市）、大祭天石門彦神社（島根県浜田市）、天岩戸神社（京都府福知山市）、天石立神社（奈良県奈良市）、大谷神社（高知県香美市）、天石門別八倉比売神社摂社箭執神社（徳島県徳島市）、天石門別神社（茨木神社奥宮）（大阪府茨木市）、八剱神社（岐阜県羽島市）、手力雄神社（岐阜県大垣市）などがあります。これらの神社は、地域社会における天石門別神の信仰の深さを物語っています。

まとめ

天石門別神は、日本神話における重要な神であり、天皇の宮殿を守る神として、古来より信仰されてきました。複数の氏族の祖神ともされており、その系譜や役割については、様々な解釈がなされています。今後も、文献研究や考古学的調査を通じて、天石門別神に関する理解を深めていくことが重要です。 様々な文献からの情報と、各地の神社における信仰を総合的に考察することで、天石門別神の真の姿に迫ることができるでしょう。

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