天草四郎の犯罪

天草四郎の犯罪

西村京太郎による長編推理小説『天草四郎の犯罪』は、2008年に中央公論新社から刊行されました。江戸時代最大規模の一揆である島原の乱をモチーフとし、歴史上の人物と同名を名乗る謎の男を中心に物語が展開されます。

あらすじ

甲州街道で発生した強盗事件をきっかけに、物語は動き始めます。犯人たちは逃走中に杖をついた男と遭遇し襲撃を試みますが、逆に杖一本で打ちのめされます。男は警察に「天草四郎」と名乗り、付近を散歩していただけだと告げます。

その後も、天草と名乗る男は宝石強盗を撃退したり、リコール問題で揺れる自動車会社の社長を暴漢から守ったりと、正義の味方として活躍します。やがて、彼は汚職疑惑のある元総理大臣の顧問弁護士のボディーガードを依頼されます。

しかし、弁護士たちが滞在する湘南の別荘がテロリストに襲撃される事件が発生。天草はテロリストを撃退するものの、自身も負傷してしまいます。入院した天草は世間の同情を集めますが、宝石強盗事件で彼に関わった十津川警部は、旧友の記者から天草に対する疑念を聞かされます。

数日後、天草は睡眠薬で自殺を図り意識不明となります。遺書には、本名が「天草四郎」であること、島原の乱の舞台となった原城跡を有名にしたいという願いが書かれていました。遺書が公開されると、多くの寄付が集まり記念館が建設されることになります。しかし、警視庁には天草の武術が「殺陣」ではないかという投書が届き始めます。

登場人物

警視庁捜査一課

十津川省三：本作の主人公。天草四郎を巡る事件の真相を追う。
亀井定雄：十津川の部下。
西本明
三田村功
北条早苗
本田時孝
三上刑事部長
柳田警部

事件関係者

天草四郎：島原の乱の指導者と同名を名乗る謎の男。事件に遭遇し、犯人を撃退する。
田島記者：十津川の旧友で、中央新聞の記者。天草の武勇伝に疑問を抱く。
小池清一郎：自動車メーカーの社長。天草に命を救われる。
小松原：外務大臣。小池社長が襲撃された病院で天草と知り合う。
三枝：弁護士。小池社長の勧めで天草をボディーガードに雇う。
大垣：前総理。別荘でテロリストに襲撃され、天草に助けられる。
天草典子：島原に住む女性。天草の母親だと名乗る。

天草に退治された犯罪者たち

カップル強盗団：天草が世に出るきっかけとなった強盗犯。
戸田圭介
小西慎二
宝石強盗団：
村田実
阿川慎太郎
長池俊介
大内幸雄
小池清一郎社長襲撃犯：
尾崎健二
テロ組織『平成維新』：
合田肇
島田隆史
浅野俊一
黒川聡

天草四郎に懐疑的な人々

沢田一心：合気道の師範。天草の武術がやらせではないかと疑う。
谷田公誠：棒術の師範。天草に決闘を申し込む。
小林亜矢子：高校教師。天草の素性を疑い、警察に調査を依頼。
本橋光一郎：元教師。『日本キリシタン史研究会』の代表。天草を詐欺罪で告発。
宇田川弁護士：天草を告発した弁護士グループの代表。

その他

三浦勝：強盗犯の友人。
江上徹：宇田川弁護士が召喚した証人。
天草四郎：本名・益田四郎時貞。島原の乱の指導者。本作では、同姓同名の人物が出現することで物語が展開する。

『天草四郎の犯罪』は、史実と虚構が入り混じるミステリーであり、現代社会における正義や信仰のあり方を問いかける作品です。

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