原城

原城の歴史と構造

原城は、長崎県南島原市南有馬町に位置する、かつて存在した日本の城です。別名を春城、志自岐原城、日暮城、有馬城とも呼ばれ、国の史跡に指定されています。2018年には、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産として世界遺産に登録されました。

1496年、有馬貴純によって日野江城の支城として築城されたのが始まりです。その後、16世紀末には有馬晴信によって居城として整備され、瓦葺きの屋根を持つ織豊系城郭へと生まれ変わりました。本丸、二の丸、三の丸、天草丸、出丸などが築かれ、現在残る石垣や枡形、本丸天守台は、この改修時のものです。築城後、日野江城は隠居城として使用される予定でしたが、本拠の移転は実現しませんでした。

1616年には松倉重政が日野江城に入城しますが、一国一城令の影響もあり、不便な日野江城を放棄し、島原城を築城しました。この際に原城は廃城となりましたが、石垣や多くの建築物は実際には残されたと推測されています。2004年の調査では、本丸大手門跡から巨大な礎石が発見され、当時最先端の築城技術が用いられていたことが示唆されています。

島原の乱と原城

1637年から1638年にかけて、島原の乱が発生し、廃城となっていた原城は一揆勢の拠点となりました。約3万7千人もの人々が原城に立て籠もり、天草四郎を総大将として、幕府軍と激しい籠城戦を繰り広げました。原城は、1604年にキリスト教によって祝別されており、一揆勢にとっては強固な軍事施設であると同時に、精神的な拠り所でもありました。

一揆勢は、新たに堀や土塁を築き、本丸を「島」のようにして籠城しました。本丸には天草四郎の居宅があったとされ、絵図や書状にもその存在が記録されています。しかし、3ヶ月に及ぶ籠城戦の末、兵站が途絶え、弾薬や兵糧が尽き果て、幕府軍の総攻撃によって一揆勢は全滅しました。幕府軍の記録によると、内通者を除いて老人や女子供に至るまで皆殺しにされたとされています。ただし、実際には1万人以上が投降し生き延びたとする説もあります。

乱の終結後、幕府は二度と拠点として使用されないよう原城を徹底的に破壊し、一揆勢の遺体を原城跡にまとめて埋めました。

発掘調査による発見

1990年以降、原城跡では発掘調査が行われ、城の残骸とともに大量の人骨や十字架、メダル、ロザリオなどが発見されました。また、2000年の調査では、国内最大級の虎口遺構が確認され、その規模は南北90メートル、東西80メートルのほぼ正方形でした。さらに、城内の主通路には玉砂利が敷かれていたことも明らかになりました。2004年の調査では、キリスト教関係施設で使用されていた花十字紋瓦の破片も発見されています。

本丸西側からは、一揆勢が使用したと推測される竪穴建物跡群が見つかりました。これらの建物跡は、規格性があり、家族単位で使用されていたと考えられています。また、竪穴建物内には暖房や煮炊きに関する遺構がほとんど見つかっていないことから、籠城中に失火を防ぐための厳格な軍規が存在したことが示唆されています。

検出された石垣は、慶長年間前期の豊臣系城郭の影響を色濃く受けており、デイサイトを主体とした石材が使用され、緩やかな傾斜で高石垣を構築しようとした意図が見られます。これらの調査結果から、原城は廃城後も防御施設が残存しており、現在の姿は島原の乱後の破却によるものと指摘されています。

原城へのアクセスと関連情報

原城跡へは、島鉄バスの原城前バス停から徒歩約15分でアクセスできます。原城は、島原の乱、日本の城一覧、九州・沖縄地方の史跡一覧、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」、海城など、多くの歴史的な要素に関連しています。

原城は、その歴史と遺構を通じて、日本の城郭史やキリスト教文化、そして島原の乱という歴史的な出来事を今に伝える重要な場所です。発掘調査によって明らかになった事実と、史料に残された記述を照らし合わせることで、原城の歴史はより深く理解することができます。

もう一度検索