天覧山駅

天覧山駅の歴史と現状

天覧山駅（てんらんざんえき）は、埼玉県飯能市本町（かつての大字原町）にかつて存在した西武鉄道の駅です。この駅は1931年4月1日に武蔵野鉄道によって開業され、その後1945年の戦争末期に一時休止となり、1954年に廃駅となりました。駅は1面1線の「棒線駅」として設計され、訪れる観光客を迎える役割を担っていました。

駅のホームは南側に位置し、長さ約19メートル、幅約5メートル、高さ1メートルの小さなものでした。駅舎に関する詳細は不明ですが、ホームの機能は観光客が天覧山を訪れるための起点として十分であったと推測されます。駅の出入口は南向きで、駅前広場に面して設けられていました。また、観光のための整備も行われ、駅前には桜の木が植えられ、天覧山の登山口への弓なりの道が整備されていました。この桜並木は、訪れる観光客にとっての見どころとなり、春の時期には花見を楽しむ人々でにぎわったと伝えられています。

1945年2月3日、戦争の影響で駅は休止され、その後の復活の話も持ち上がりましたが実現せず、最終的には1954年10月10日に廃駅としての幕を閉じました。廃駅に関する情報では、ある説では1946年10月10日が廃駅日とされていますが、公式には1954年とされています。

駅が閉鎖されてから半世紀以上が経過しましたが、その跡地は今も残されています。周囲の状況は大きく変わり、池袋線本体が嵩上げされるなど、地域の変貌は著しいです。しかしながら、かつてのホームの一部や駅前の広場はまだその姿を残しており、特にホームの跡は草に覆われながらも大谷石の石積みが見える形で一部が確認できる状態です。

かつての駅前広場は広大なものであったわけではなく、現在では道と一体化してしまっています。ただ、その跡地はかつての広場の存在を物語るような形でくぼんでおり、周囲にはフェンスで囲まれた休憩所やベンチも設置されていますが、利用されることはほとんどありません。また、駅近くから天覧山の登山口へ続く道もかろうじて残っており、今もその道を辿って登山道へアクセスできる状況ですが、一部は都市開発の影響を受けて変更されています。

駅が営業していた頃は周囲は田園地帯だったものの、現在はほぼすべてが住宅地に変わっています。そのため、当時の桜並木や広場の風景はすっかり消えてしまいました。ただし、地元の好意により広場の右手には古い桜の木が一本だけ残されており、当時の面影をひっそりと伝えています。また、駅の西側には「天覧山入口」という名称のバス停が設けられており、飯能駅から高麗駅への路線が設置されていますが、これはまるで当駅の代替としての役割を果たしているかのようです。

このように、天覧山駅はその存在を無くした後でも地域の歴史に深く根付いており、今もなお、その名残を感じることができる場所となっています。

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