天野可淡

天野可淡：夭逝の天才人形作家とその魅力的な作品世界

天野可淡（あまのかたん、1953年-1990年）は、日本の創作球体関節人形作家として知られています。本名は大作紀美子。その独特の耽美的な作風は、多くのコレクターやアーティストを魅了し続け、現在でも高い人気を誇ります。

生涯と創作活動

東京都世田谷区に生まれた天野は、1962年に東映児童研究所第四期生として研鑽を積みます。その後、女子美術大学在学中の1974年から人形制作を開始。1981年には銀座で初の個展を開催し、本格的な作家活動へと歩みを進めました。

1988年には、人形作家としても著名な吉田良一氏（現・吉田良氏）が代表を務めるドールスペース・ピグマリオンに参加。吉田氏との協働を通じて、天野の作品世界はさらに深みを増していきました。しかし、1990年、オートバイ事故により、惜しまれつつも37歳の若さでこの世を去ります。

作品と出版物

天野の作品は、その繊細な造形と独特の雰囲気で高く評価されています。彼女の作品は、しばしば耽美的な表現や、どこかノスタルジックな雰囲気を帯びています。

彼女の作品集は、トレヴィル社より『KATAN DOLL』『KATAN DOLL fantasm』『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』の3冊が出版されました（写真撮影は吉田良一氏）。しかし、出版社の倒産により、長らく入手困難な幻の出版物となっていました。

その後、2007年に復刊ドットコムの企画により、上記3冊がエディシオン・トレヴィルより復刻され、多くのファンを喜ばせました。さらに、1995年にはシンフォレストからCD-ROM版『KATAN DOLL』も発売されましたが、こちらも現在は入手困難となっています。

2015年には、写真家である片岡佐吉氏による写真集『天野可淡 復活譚』（KADOKAWA）が出版されました。この写真集には、ミステリー作家である綾辻行氏による寄稿も収録されており、綾辻氏が自身の作品『Another』の登場人物造形に天野の作品からインスピレーションを得ていたことが明かされています。

作品の現況と展示

天野の作品の多くは、個人コレクターの手に渡っており、散逸しているのが現状です。その中でも、片岡佐吉氏が所有する作品は、かつて片岡氏がオーナーを務めていた人形博物館「マリアの心臓」（京都大原）で展示されていました。（2022年7月閉館）

2004年には、押井守監督作品『イノセンス』公開記念の企画展「球体関節人形展～DOLLS OF INNOCENCE～」で数点の作品が東京都現代美術館に展示されました。また、2010年には東京国立近代美術館へ2作品が寄贈されています。

天野可淡を巡るメディア

1994年には、フジテレビの番組「ワーズワースの冒険」で、天野可淡の人生と作品を特集した「消えた少女人形の謎～カタン・ドールの世界～」が放送されました。この番組は、天野の作品の魅力と、彼女を取り巻く謎めいた雰囲気を伝えています。

天野可淡の作品とその後

天野可淡の作品は、その独特の美意識と、短い生涯のうちに生み出された数々の傑作によって、人形芸術史に大きな足跡を残しました。彼女が残した作品は、現在も多くのファンを魅了し続けており、その神秘的な魅力は、これからも人々の心を捉え続けることでしょう。入手困難な作品集の復刊や、著名作家との関わりなど、天野可淡を取り巻く様々なエピソードは、彼女の人物像と作品の魅力をより深く理解する上で重要な手がかりとなっています。彼女の作品は、単なる人形を超えた、独自の芸術表現として、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

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