太山寺 (神戸市)

太山寺：歴史と自然が織りなす、神戸の古刹

兵庫県神戸市西区に佇む太山寺は、天台宗に属する由緒ある寺院です。三身山を背に、豊かな自然に抱かれたその境内は、静寂と荘厳さに満ち溢れています。本尊は薬師如来で、新西国三十三ヶ所霊場の第25番札所でもあります。

創建と歴史：謎に包まれた起源と栄華

太山寺の創建は、元正天皇の勅願寺として霊亀2年（716年）と伝えられています。創立者とされる藤原宇合は、藤原鎌足の孫にあたるとされますが、初代住職とされる定恵については、藤原鎌足の長男で若くして出家、遣唐使として唐に渡ったと記されています。しかし、定恵の生涯には不明な点が多く、没年も諸説あり、太山寺周辺からの定恵時代の遺物は確認されておらず、実際の創建は平安時代以降であるという説も有力です。

南北朝時代には、大塔宮護良親王の令旨を受け南朝方として活動した歴史も持ちます。かつては41ヶ坊の支院や多くの末寺・末社を有し、僧兵を擁する一大勢力であったと伝えられています。その隆盛を物語るように、境内には国宝や重要文化財が数多く残されています。

見どころ：国宝本堂と豊かな自然

太山寺の最大の見どころは、なんといっても国宝に指定されている本堂です。鎌倉時代、正安2年（1300年）頃建立と推定され、入母屋造、銅板葺きの堂々たる建物です。本尊の薬師如来に加え、新西国三十三ヶ所霊場の本尊である十一面観音も祀られています。和様を基調としながらも、禅宗様の要素も取り入れた独特の建築様式は必見です。

本堂以外にも、重要文化財に指定されている仁王門や阿弥陀如来坐像をはじめ、多くの文化財が大切に保存されています。安土桃山時代作とされる安養院庭園は国の名勝に指定され、枯山水の美しい景観は訪れる人を魅了します。さらに、境内の原生林は「太山寺風致地区」として保護され、ひょうごの森百選にも選ばれており、春には桜、秋には紅葉と、四季折々の美しい自然が楽しめます。

境内には、阿弥陀堂（常行堂）、庫裏、鐘楼、経蔵、護摩堂、羅漢堂、釈迦堂、三重塔など、様々な建物が点在しています。また、鎌倉時代の磨崖仏（不動明王立像）も神戸市の指定史跡として重要な文化財となっています。現在も龍象院、成就院、遍照院、安養院、歓喜院の5ヶ坊が塔頭として存在しています。

文化財：国宝、重要文化財、名勝など

太山寺には、数多くの貴重な文化財が所蔵されています。

国宝: 本堂（神戸市内唯一）
重要文化財: 仁王門、木造阿弥陀如来坐像、様々な仏画、武具類など多数
国指定名勝: 安養院庭園
兵庫県指定有形文化財: 三重塔
* 神戸市指定文化財: 歓喜院表門、磨崖不動明王、庭園、仏像、経典など多数

これらの文化財は、太山寺の歴史と文化を今に伝えています。

アクセスと情報

太山寺へのアクセスは、神戸市営地下鉄西神・山手線 学園都市駅から徒歩25分、または神姫バスを利用できます。拝観料は300円（元日は無料）です。開門時間は8:30～17:00（12月～2月は16:30）です。

太山寺は、歴史と自然が融合した、静寂と荘厳さに満ちた場所です。神戸を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

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