薬師如来

薬師如来の信仰と教義

薬師如来（やくしにょらい）は、大乗仏教で特に病気平癒を祈願する信仰の対象となる如来であり、その教義は日本でも非常に広く知られています。サンスクリット語では「Bhaiṣajyaguru」と呼ばれ、薬王や医王善逝とも称されることがあります。この如来は、特に現世利益信仰を集める特殊な存在であり、その存在意義は患者の癒しや寿命の延長に寄与するとされています。

薬師如来の基本概念

薬師如来に関する主要な経典は、661年に玄奘が訳した『薬師瑠璃光如来本願功徳経』や707年の義浄による『薬師瑠璃光七佛本願功徳経』です。これらの経典では、薬師如来が東方の浄瑠璃世界の教主であり、菩薩時代において12の大願を発し、病気を治し、衆生を助けることを誓ったとされています。

特に、薬師如来は無明の病を治す医薬の仏としても知られており、その薬壺を用いた象徴的な施しは、信者に希望を与える重要なシンボルです。薬師如来はまた、光明を以って病苦を救うとされ、その光が衆生に安らぎをもたらすと信じられています。

密教との関連

薬師如来は密教においても重要な存在であり、「薬師瑠璃光如来消災除難念誦儀軌」や「薬師七仏供養儀軌如意王経」などの経典があります。真言宗では、薬師如来は国家の鎮護を担う如来として、特に重要視されています。さらには、薬師如来は天台宗とも強い結びつきを持ち、東方の如来として帝と関連づけられることもありました。

十二大願

薬師如来は、12の大願を持っています。これらは具体的な実現を目指すもので、衆生の福祉や願いを叶える内容となっています。たとえば、衆生が病苦から解放されること、十分な食糧を得ること、そして正見を得て菩提の道に入ることなどが含まれています。これらの願いは、人々の苦しみを和らげるためのものであり、薬師如来の特異な役割を際立たせます。

日本における信仰

日本では、薬師如来は特に現世利益を求める人々に親しまれています。彼の像は数多く存在し、病気平癒の祈りを込めて造像されたものが多く見られます。国宝に指定されている薬師如来像も多く、奈良の法隆寺や薬師寺などはその代表的な例です。また、薬師如来の縁日は毎月8日とされており、これは薬師如来の徳を称えるための特別な行事が執り行われます。

結論

薬師如来は信者にとって非常に身近な存在であり、その教えや信仰は日本の仏教界において重要な地位を占めています。現世利益を求める信仰は多くの人々に支持され、病気平癒の願いを叶えるための仏として、長きにわたって人々の心を支えてきました。

もう一度検索