藤原宇合

藤原宇合：奈良時代の重臣とその波瀾万丈な生涯

藤原宇合（ふじわら の うまかい、694年～737年）は、奈良時代を代表する公卿の一人です。藤原不比等の三男として生まれ、幼名は馬養（うまかい）でした。華麗なる経歴と数々の重要な役割を担った宇合の生涯を、詳細に見ていきましょう。

遣唐使副使としての経験と変名

霊亀2年（716年）、宇合は遣唐副使として唐へ派遣されます。当時、正六位下だった彼は、この任命を機に、従五位下へと一気に昇進しました。これは、大使と副使の位階が同じという異例のことでした。父・不比等の絶大な政治力によるものだと推測されています。唐への渡航を経て、宇合は帰国後に馬養から宇合へと改名しています。養老2年（718年）に帰国した宇合は、その功績によって正五位上に昇叙されました。

国内での活躍：反乱鎮圧と宮殿造営

帰国後、宇合は常陸国守に任命され、安房・上総・下総の三国の按察使も兼ねました。その後、父・不比等の死（養老4年（720年））の翌年、正四位上に昇進。神亀元年（724年）、蝦夷の反乱が勃発すると、宇合は持節大将軍に任命され、反乱鎮圧のために遠征。その功績により、従三位・勲二等に叙せられ、公卿の地位に昇りました。さらに、神亀3年（726年）には難波宮造営の責任者も務めました。

長屋王の変と藤原四子政権

長屋王の変（神亀6年（729年））においては、宇合は六衛府の兵士を率いて長屋王邸を包囲するなど、軍事面で中心的役割を果たしました。この活躍にもかかわらず、当時、藤原氏からすでに二人の議政官が輩出されていたため、宇合の参議昇進は一旦見送られました。しかし、天平3年（731年）、多くの参議が抜擢される中で、宇合は弟の麻呂と共に参議に昇進。藤原四兄弟全員が議政官となり、藤原四子政権が確立しました。

西海道節度使としての活躍と後世への影響

天平4年（732年）、宇合は西海道節度使に任命され、九州に赴任しました。赴任に際しては漢詩が『懐風藻』に、そして見送る歌が『万葉集』に残されています。九州では、軍事行動マニュアルである「式」を整備し、その影響は50年後の宝亀11年（780年）まで大宰府に及んでいました。宇合が整備した「式」は、後世においても活用され続けたことがわかります。

晩年と死

天平6年（734年）には正三位に昇進しました。しかし、天平9年（737年）、平城京で疫病が流行した際に、宇合は44歳で亡くなりました。その最終官位は正三位参議式部卿兼大宰帥でした。

宇合の功績と歴史的意義

藤原宇合は、遣唐使副使としての経験、蝦夷の反乱鎮圧、難波宮造営、長屋王の変での活躍など、様々な場面で重要な役割を果たしました。藤原四子政権の確立にも大きく貢献し、軍事面での功績は後世にまで影響を与えました。彼の生涯は、奈良時代の政治・軍事史を語る上で欠かせない存在であると言えます。また、宇合が建立したと伝わる太山寺も、彼の歴史的意義を示す一つの証です。

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