太平寰宇記

『太平寰宇記』の詳細

『太平寰宇記』（たいへいかんうき）は、北宋時代の楽史によって10世紀後半に編纂された地理書であり、全200巻という膨大な文献です。この書籍は、地方ごとの著名な人物や文化を詳細に記載しており、後世の地理書に多大な影響を与えました。特に、完成されたこの書は、地理研究の重要な指針となり、地域の歴史や文化を理解するための貴重な資料となっています。

歴史的背景

『太平寰宇記』の編纂は、太平興国4年（979年）に天下統一を果たした太宗が、その業績を称えるための文書として位置づけられました。楽史が著したこの書は、当時の地理状況や行政の詳細を知るための重要な手がかりとなったのです。また、以前の地理書である唐の賈耽の『元和郡県志』に比べて、より体系的で整然とした形式で情報が整理されています。ただし、引用された多くの情報は唐や五代以前のものであるため、北宋だけでなく、唐代の地理や文化についても理解を深めるための重要な資料です。

構成と内容

この書は、全国の地理を「道」と呼ばれる制度に従って整理しており、13の道に分けられています。北宋では至道3年（997年）に全国を「路」に分けましたが、『太平寰宇記』はそれ以前の制度に従い記述されています。各道に関連する州、府、県、さらには宋の特異な行政区である軍や監について記載しており、首都である河南道の東京開封府から始まり、各地域についての詳細な情報を提供しています。特に最初の171巻は、各州の戸数、風俗、著名人、特産物、沿革などを記しており、残りの29巻では周辺の異民族（四夷）についての記録がなされています。

地域別の記載

• - 河南道 (巻1-24): 首都を中心とした地域の情報。
• - 関西道 (巻25-39): 西部地域についての詳細。
• - 河東道 (巻40-51): 河の東側に位置する州の情報。
• - 河北道 (巻52-71): 河の北側の地理について。
• - 剣南西道 (巻72-82): 西南地域の詳細。
• - 剣南東道 (巻82-88): 東南地区の記録。
• - 江南東道 (巻89-102): 江南地方の文化など。
• - 江南西道 (巻103-122): 江南の他の側面。
• - 淮南道 (巻123-132): 淮南地域の情報。
• - 山南西道 (巻133-141): 山南地域の記載。
• - 山南東道 (巻142-149): 東側の詳細な記録。
• - 隴右道 (巻150-156): 隴右側の地理。
• - 嶺南道 (巻157-171): 南方地域の情報。
• - 四夷 (巻172-200): 異民族に関する資料。

文献の欠落

清代において、『太平寰宇記』の一部の巻が欠落していることが確認されています。特に巻4と巻113から119の8巻は失われています。光緒8年（1882年）に出版された金陵書局本は校勘が優れていると評価されているものの、やはりいくつかの巻が欠けています。一方で、日本の宮内庁書陵部に所蔵されている版には、欠落していた巻のいくつかが含まれており、清末の『古逸叢書』に収めることで、いくつかの欠失を補完することができました。

このように、『太平寰宇記』は北宋時代の地理や文化を知るうえで非常に重要な役割を果たしており、地理学や歴史学の研究においても欠かせない資料とされています。

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