太田輪中

太田輪中の概要

太田輪中（おおたわじゅう）は、岐阜県西濃地方の揖斐川右岸に存在した輪中の一つです。この地域は、現在の海津市の旧南濃町南部に該当し、東側に揖斐川、西側に養老山地という自然の要塞に囲まれています。輪中は南北に細長く、揖斐川と養老山地からの水流を防ぐ目的で山除川沿いに人工的に堤防が設けられました。特に北側においては、扇状地の高位部分に位置しているため堤防は持たず、山除川は輪中の西側から南側へと流れ、最終的に東側で揖斐川に合流します。

地域の中心部には、南北に延びる約3.3キロメートルの中堤が存在し、その両側には多くの集落が形成されていました。中堤の西側には外新田、中島村、下境村、下一色村といった4つの集落があり、東側には太田新田や大境新田があります。一方で、西側には山除川のさらに西側に位置する太里村や内新田、松山村も含まれており、興味深い地理的特徴を持っています。

歴史的背景

太田輪中が形成された時期は特定できませんが、江戸時代以前には山除川が揖斐川に合流する北寄りの河道が流れており、遡る形で香取川（境川）がその流れに繋がっていました。太田輪中の成立は近世以前に遡ると考えられ、西側の集落がすでに存在していたことからもそのことが伺えます。特に1644年に開発された内新田の土地は、山除川堤防と中堤によって形成された輪中の一部としての成立を示しています。

中堤の西側に位置する集落の開発が進んだ一方で、東側の地域、特に太田新田と大境新田も1647年と1648年にそれぞれの検地や開発記録が残っており、西側の開発からわずか数年の内に成立したことがうかがえます。それぞれの地区において開発された土地は、最初に築いた西側地域から有利に影響を受けることがあり、中堤そのものは徐々に棄てられる運命をたどりました。

また、中堤周辺では水利をめぐる争いが見られ、特に東側の新田同士での対立が続きました。このことは明治時代に入っても続き、長らく地域全体としての水防共同体を組織することが難しい状況が続きました。

木曽三川分流工事とその影響

明治時代に行われた木曽三川分流工事は、設計者ヨハニス・デ・レーケの計画に基づいて進められました。この工事では1990年から始まる第3期の工事が行われ、特に香取川の廃川とその河道の跡が利用される形で山除川が揖斐川に合流しました。また、太田輪中南端で山除川と合流していた長除川もその流れを北へと変更し、太田輪中の北部域が揖斐川に合流するように改変される結果となりました。

これらの歴史的な背景や地理的な特徴を持つ太田輪中は、地域の水防や集落形成の重要な要素として今に残る地域文化の一部です。

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