太陽がいっぱい (映画)

映画『太陽がいっぱい』

『太陽がいっぱい』は、1960年に公開されたフランス・イタリアの犯罪映画で、原題は「Plein Soleil」です。これは、パトリシア・ハイスミスの小説「太陽のただ中」を原作にした作品で、ピカレスク・サスペンスに位置付けられています。この映画は、ルネ・クレマン監督の代表作の一つとして名高く、主題曲はニーノ・ロータによって作曲され、その音楽も広く知られています。映画には、アラン・ドロンをはじめ、モーリス・ロネ、マリー・ラフォレといった俳優たちが出演しており、アラン・ドロンにとっては国際的なスターへの足掛かりともなりました。

制作背景

ルネ・クレマン監督は、1945年に『鉄路の斗い』でカンヌ国際映画祭での国際審査員賞と監督賞を獲得し、その後も多くの社会性の強い作品を手掛けてきました。1959年に公開されたアラン・ドロン主演の映画を観たクレマンは、彼に主役のオファーを出しました。撮影は1960年の夏、イタリアのナポリ県やローマの美しい風景を背景に行われました。この作品に関する情報は、日本でも早くから報じられ、多くの関心が寄せられました。映画のタイトルも、当初の文学的なものでなく、よりシンプルな「太陽がいっぱい」とされたことで、広く受け入れられることとなりました。

あらすじ

物語は、ローマのカフェで会話を交わす大富豪の息子フィリップと、一流社会には触れたことがない貧しい青年トム・リプリーの出会いから始まります。フィリップは自由気ままに遊び回る一方、トムはアメリカからフィリップを連れ帰る報酬目当てに彼の傍にいます。二人の関係は、フィリップの傲慢さとトムの嫉妬心によって徐々に悪化し、トムはフィリップの富を狙うようになります。

物語が進むにつれ、フィリップとマルジュの愛はさらに深まり、トムはますます孤立していきます。やがて、トムはフィリップを排除する計画を策て殺害に踏み切ります。本作では、「資産を持つ者」と「持たざる者」の対比が鮮やかに描かれており、トムの心理的葛藤や、フィリップとの緊張感溢れる関係が魅力的に映し出されています。

ラストシーン

フィリップの殺害後、トムは彼の身分を偽り、フィリップの財産を手に入れることを目指します。ところが、意外な展開が待ち受けており、彼の計画は思わぬ形で崩れていくことになります。最後には、悲劇的な結末が訪れ、トムの行動の結果が示されます。

この映画は、視覚的にも美しいイタリアの風景と共に、人間の内面の暗い部分を見事に描写しており、その対比が観客に深い印象を与えています。クレマン監督の技巧とアラン・ドロンの存在感が結実した名作として、今もなお多くの人々に愛され続けています。

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