太陽の沈まない国

太陽の沈まない国

「太陽の沈まない国」という言葉は、ある領土で太陽が沈んでいても、別の場所では太陽が出ている状態を指し、かつて世界中に植民地を持ち、繁栄を極めた大帝国を形容する際に用いられました。この言葉は、単に地理的な現象を指すだけでなく、その国の絶大な権力と影響力を象徴するものでもありました。

歴史上の「太陽の沈まない国」

歴史上、「太陽の沈まない国」と呼ばれたのは、主に以下の二つの帝国です。

スペイン帝国（スペイン・ハプスブルク帝国）

16世紀から17世紀にかけて、スペイン・ハプスブルク家は広大な領土を支配し、その最盛期には「太陽の沈まない国」と称されました。フェリペ2世の時代には、ポルトガル王位を兼ね、ヨーロッパ大陸のネーデルラントや南イタリア、そして中南米、フィリピン、マカオ、マラッカ、ゴアなどの海外植民地を支配下に置きました。

しかし、無敵艦隊の壊滅を契機にその勢力は衰退に向かいました。八十年戦争やフランス・スペイン戦争での敗北、新興国であるオランダやイングランドの台頭により、スペインはヨーロッパの覇権を失い、その繁栄は終焉を迎えました。

イギリス帝国（大英帝国）

17世紀から20世紀にかけて、イギリスは広大な植民地を築き、「太陽の沈まない国」を実現しました。特に17世紀後半の英蘭戦争での勝利、17世紀後半から19世紀初頭にかけてのフランスとの一連の戦争（第2次百年戦争）での勝利は、イギリスの覇権を確立する上で重要な転換点となりました。七年戦争の結果、アメリカとインドでの植民地獲得競争で勝利し、イギリスは世界中に広大な植民地を持つ大帝国となりました。

イギリス帝国は19世紀後半に最盛期を迎えましたが、ドイツ帝国などの新興国の台頭、二度にわたる世界大戦、そして旧植民地の独立により、その勢力は徐々に衰退しました。なお、アメリカ独立戦争以前を第一次帝国、以降を第二次帝国と呼ぶことがあります。

現在の「太陽の沈まない国」

現在では、「太陽の沈まない国」が意味するような覇権を握る国は存在しませんが、地理的な条件から領土のいずれかで常に太陽が昇っている国は存在します。

イギリス: ヨーロッパ、太平洋、インド洋、カリブ海に領土を保有しており、例えば太平洋のピトケアン諸島、インド洋のイギリス領インド洋地域、カリブ海のケイマン諸島などが該当します。
フランス: ヨーロッパ、太平洋、インド洋、カリブ海に領土を保有しており、例えば太平洋のフランス領ポリネシアやニューカレドニア、インド洋のレユニオン島、カリブ海のマルティニークやグアドループなどが該当します。

また、高緯度地域では白夜が発生するため、夏季には常に太陽が昇っている場所も存在します。例えば、ノルウェー領のスヴァールバル諸島では、夏季には一日中太陽が沈まない現象が見られます。さらに、ロシアのように広大な国土を持つ国では、東西に領土が広がっているため、国土のどこかで常に太陽が昇っている期間が長くなります。アメリカも同様に、広範囲に国土が広がっているため、一日の大半で国内のどこかで太陽が昇っています。

まとめ

「太陽の沈まない国」という言葉は、歴史的にはスペイン帝国とイギリス帝国という、世界中に植民地を持ち、絶大な権力と繁栄を誇った大帝国を指す言葉でした。現在では、地理的な条件から常に太陽が昇っている国は存在しますが、かつてのような覇権を握る国は存在しません。「太陽の沈まない国」という言葉は、過ぎ去った帝国の栄光を偲び、歴史を振り返る上で重要なキーワードとなっています。

関連項目

覇権
覇権主義

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