太陽風交点事件

太陽風交点事件についての詳細

概要

太陽風交点事件とは、1980年代の日本における重要な出版に関する裁判であり、特にSF作家と出版社の関係を 大きく変えるきっかけとなりました。主な争点は、著者である堀晃と早川書房の間で結ばれた出版契約がどのような性質を持つのかでした。この事件は、後に日本のSF界に深い影響を及ぼし、出版社や作家間の契約形態にも見直しがもたらされました。

事件は、堀晃の短編集『太陽風交点』が第1回日本SF大賞を受賞したことをきっかけに起こりました。早川書房がその書籍の文庫版を出版しようとしていたところ、堀が徳間書店とも文庫版の出版契約を結びます。これに対して早川書房は堀と徳間書店を訴え、裁判が展開されました。

経緯

事件の発端は1977年まで遡ります。早川書房の編集長代行である今岡清が堀に短編集の出版を勧めました。1978年にタイトルが決まり、1979年には早川書房から単行本『太陽風交点』が刊行されました。この書籍は後に日本SF大賞を受賞し、その際堀は徳間書店と文庫版の出版契約を結びます。

しかし、早川書房は自社の出版権を主張し、1984年には東京地裁に訴訟を起こしました。一審では早川書房の主張が棄却され、控訴審でも同様の判断がされました。この裁判の影響で、早川書房は開発中だった文庫版の刊行を断念せざるを得なくなり、その結果、3万部が製本されていたにもかかわらず市場に出ることはありませんでした。

裁判所の判断

裁判所は、堀と早川書房間に結ばれた契約が口頭契約であったため、出版権的な合意は存在しないと判断しました。また、出版する際の慣行に関しても、早川書房の主張を退け、堀に出版権があったと認めました。この結果、早川書房の出版権を巡る請求は失敗に終わりました。

影響

この事件の最大の影響は、早川書房に対する信頼を著しく損なう結果となったことです。多くの日本SF作家が出版社の待遇に不満を覚え、早川書房から離れたことは、出版業界に波紋を呼びました。特に小松左京は、早川書房の態度に反発し、自らも執筆活動を停止するなどの行動に出ました。これにより、日本SF作家クラブの主催である日本SF大賞の受賞作品が、早川書房以外から多く選ばれることに繋がり、業界全体が変革の過渡期を迎えました。

まとめ

太陽風交点事件は、出版社と作家間の契約慣行を大きく変えた歴史的な出来事であり、以降の出版契約は口頭契約から書面契約に進化していく契機となりました。この裁判を通じて日本のSF界は新たな時代を迎えることとなったのです。

もう一度検索