夫婦善哉 (トーク番組)

『夫婦善哉』

『夫婦善哉』（めおとぜんざい）は、1955年6月13日から1975年9月27日まで、足かけ20年以上にわたり朝日放送（ABC）で制作・放送された視聴者参加型トーク番組です。番組は当初、ABCラジオで放送を開始し（1955年6月〜1970年2月）、後にABCテレビでも放送されるようになりました（1963年8月2日〜1975年9月27日）。放送網は、1975年3月のいわゆる「腸捻転」解消まではTBS系列局で、それ以降はNETテレビ（現・テレビ朝日）系列局で展開されました。

番組の始まりと特色

番組は1955年6月13日、『蝶々・雄二の夫婦善哉』というタイトルで、当時の人気夫婦漫才コンビであるミヤコ蝶々と南都雄二を司会に迎えてスタートしました。この番組の最大の特徴は、毎回一般の夫婦をスタジオに招き、司会の二人がその夫婦の結婚生活における秘訣や、新婚時代の微笑ましいエピソードなどを巧みな話術で引き出す形式にありました。このスタイルは後の人気番組『新婚さんいらっしゃい！』をはじめとする、夫婦対談を主体としたバラエティ番組の先駆けとして、多くの視聴者の支持を得ることに成功しました。

伝説の司会コンビ

番組開始当初、司会を務めたミヤコ蝶々と南都雄二は、実はプライベートでもパートナー（法的な婚姻関係ではなく事実婚）でした。しかし、1958年に南都雄二の不倫が原因で、二人の事実婚関係は解消されます。驚くべきことに、二人はその後も名コンビとして番組の司会を続けました。この経験が、皮肉にも彼らの司会に深みを与えたと言われています。関係解消後も共演を続けることで、彼らは自分たちの結婚生活や別れについてより正直に語れるようになり、それがゲストである一般夫婦から本音やリアルな体験談を引き出すことに繋がったのです。視聴者は、司会者自身の波乱万丈な背景も知っているため、番組でのトークに一層の共感と興味を抱くようになりました。

苦難、そして別れ

1967年頃から、南都雄二は長年患っていた糖尿病が悪化し、入退院を繰り返すようになります。他のレギュラー番組への出演をセーブする中、南都雄二は『夫婦善哉』に対して強い思い入れを持っていました。自身の全国的な人気を不動のものにしてくれた番組として、体調が優れないながらも司会を続け、1972年夏に長期入院するまで番組に出演しました。

しかし、療養の甲斐なく、南都雄二は番組に復帰することなく、1973年に48歳という若さでこの世を去ります。南都雄二が長期入院していた間も、番組は『蝶々・雄二の夫婦善哉』のタイトルのままでミヤコ蝶々が一人で司会を務めていましたが、雄二の逝去を受けて番組名は『ミヤコ蝶々の夫婦善哉』に改められました。その後もミヤコ蝶子単独での司会体制で番組は放送され続けました。

番組の幕引き

1975年3月末に行われた、関西地区におけるTBS系列とNET系列のネットチェンジ（いわゆる腸捻転解消）は、番組にとって大きな転換点となりました。これにより、それまで慣れ親しまれていた日曜22時台の放送が難しくなり、同年4月からは土曜22時30分への放送時間帯変更を余儀なくされます。さらに、長らくメインスポンサーだった永大産業が経営上の理由から同年6月に降板し、単独提供から複数社提供へと変わるなど、番組を取り巻く環境は厳しさを増しました。こうした状況の中、ミヤコ蝶々が番組からの降板を申し入れたこともあり、番組はラジオ時代を含め20年3か月の歴史に終止符を打つことになりました。

番組終了の理由について、当時のプロデューサーは、この番組がミヤコ蝶々と南都雄二の二人にとって「育ててきた子供のような存在」であり、雄二を失った今、蝶々さんの後任を立てることは難しいと判断したため、20周年という節目を機に潔く終了することを決定したと語っています。なお、1975年4月から9月までのNETテレビ系列でのテレビ放送期間は、わずか半年間にとどまりました。また、同年10月に開局を控えていた東日本放送では、9月に行われたサービス放送期間中に最終回が放送されています。

メディアミックスと後継番組

『夫婦善哉』はテレビ番組としてだけでなく、1965年6月には『蝶々雄二の夫婦善哉』として東映系で映画化もされました。この映画は、蝶々と雄二が演じるぜんざい屋夫婦の物語で、番組内容とは直接的な関連はありませんでしたが、劇中にテレビ版の番組が映し出されるシーンがあるなど、当時の人気ぶりがうかがえます。

また、番組は後の視聴者参加型バラエティに影響を与えましたが、特に同じ朝日放送制作の『新婚さんいらっしゃい！』が開始された際には、番組内容や趣旨が酷似しているとして、協賛社からクレームが入ったという逸話も残っています。

時を経て、1987年にはリニューアル版として『新夫婦善哉』がABCラジオでスタートしています。この番組は、桂春蝶と上沼恵美子の司会コンビにより、道頓堀にあった浪花座での公開収録形式で行われました。放送時間は日曜12時30分からでしたが、当時ABCテレビでは12時45分から『新婚さんいらっしゃい！』が放送されており、一時期、同じ局で視聴者参加型の人気番組がラジオとテレビで連続して放送されるという現象が見られました。この『新夫婦善哉』もまた、ミヤコ蝶々・南都雄二が生み出した『夫婦善哉』の系譜を受け継ぐ番組と言えるでしょう。

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