失なわれた都市

失われた都市 (The Lost City / B4)

『失われた都市』は、トム・モルドヴェイによってデザインされたダンジョンズ&ドラゴンズ (D&D) の冒険モジュールです。1982年にTSR社から出版され、D&Dベーシックセットと組み合わせて使用することを想定した独立した冒険として企画されました。当初の仮題は「The Lost City of Cynidecia」でした。

モルドヴェイは、初心者ダンジョンマスター (DM) が冒険に独自の要素を付け加えて経験を積むことを意図し、モジュールの一部のみ詳細な記述を用意しました。このモジュールは低レベルのプレイヤーキャラクター向けに設計されており、砂に埋もれゆく都市の廃墟でのみ生き残る希望を見出すことができるという設定です。冒険の舞台は巨大な階段状ピラミッドの内部で、ピラミッドの下層部分は概略のみが記述され、地下都市は主要な地区のリストと地図が提供されています。冒険の中心的な敵役は、巨大な一つ眼のモンスターであるザーゴンと、彼に仕える手下たちです。地下都市を除いたピラミッドだけでも100以上の部屋が存在します。

モジュールには外装カバーが付属し、地図とベーシックD&Dで使用できる冒険者の一覧が含まれています。さらに、D&Dエキスパートセットのルールを使用し、3レベルを超えて冒険を継続するための情報も提供されています。この冒険は、後の再編集大型モジュール「B1-9 In Search of Adventure」(1985年) で部分的に再発売され、ピラミッドの上層部のみがミスタラ・キャンペーンセッティングに組み込まれました。

1985年には、株式会社新和から『失なわれた都市』というタイトルで日本語版が出版されました。

プロット概要

この冒険は、砂に埋もれた都市を巡る物語です。都市は2つの対立する勢力によって苦しめられており、冒険の多くは巨大な階段状ピラミッドの内部で展開されます。都市の他の地域は概略的に説明されるのみで、DMが詳細を準備するための提案が提供されています。

冒険の開始時、プレイヤーキャラクターは砂漠の砂嵐の中で道に迷い、偶然ピラミッドへの入口を発見します。ピラミッドとその下の地下都市は、古代シニディシア都市の廃墟であり、古代都市の住民の子孫が住んでいます。これらのシニディシア人は退廃しており、麻薬に溺れて薬物性の幻想を見ているか、奇妙な衣装と仮面を身につけてさまよい歩くことに多くの時間を費やしています。

冒険が進むにつれて、キャラクターはザーゴンと呼ばれるモンスターがシニディシアの没落の原因であることを知ります。ザーゴンはまだ生きており、邪悪な人間の司祭たちによるカルトや様々なモンスターが彼の周囲に集まっています。ザーゴンの司祭の他に、比較的正常なシニディシア人の中にも3つの派閥が存在します。彼らは都市の古代の神々を崇拝し、ザーゴンの司祭の打倒とシニディシアの失われた栄光の回復に専念していますが、互いの信仰の違いから共通の敵に対する共闘が難しい状況です。

ピラミッドの上半分のみが詳細に記述されていますが、下半分と地下都市については、DMが冒険を発展させるのに十分な情報が提供されています。ピラミッドの上層を探索した後、プレイヤーはシニディシアの闘争に関与し、十分に強くなればザーゴンの住処で対決し、彼を打ち倒すことも可能です。

出版履歴

『失われた都市』はトム・モルドヴェイによって執筆され、ジム・ホロウェイによって挿絵が描かれました。1982年にTSRが出版し、32ページの小冊子に外装カバーが付属しました (初版はファイル用の3穴パンチが施されていました)。1985年には、株式会社新和が日本語版を出版しました。

このモジュールは、ダンジョン誌142号に掲載されたD&D第3版の冒険「Masque of Dreams」のアイデアの源となりました。この冒険はＢ･マシュー・コンクリンによって執筆され、マイケル・ウィリアム・カルタによって挿絵が描かれました。

ザーゴンとシニディシア人は、3.5版製品であるElder Evilsで再登場し、寺院がグレイホークに似たキャンペーン設定に配置されました。

評判

この冒険は、ダンジョンズ&ドラゴンズ・ゲームの30周年である2004年に、ダンジョン誌の「greatest adventure of all time」で28位にランクインしました。

Wired誌のケン・デンミードは、「Top 10 D&D Modules I Found in Storage This Weekend」の1つにこのモジュールを挙げ、「このモジュールはある地点までは詳細に記述されているが、それ以降はDMが冒険を拡張するために残されている。文明を堕落させた邪悪な"神"との最終決戦や、奇妙な麻薬中毒の生活を送り、地下湖のほとりでキノコを栽培している生存者たちの発見などが待っている」と述べています。

追加記事

論評：ディファレントワールズ誌 28号（1983年）

参考文献

The Lost City at the TSR Archive
RPG.net review

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