失声症

失声症（Aphonia）とは

失声症とは、声を発することができない状態を指します。これは、単に声が出しにくいという状態ではなく、全く声が出ない状態を意味します。医学的には、音声を発する機能に何らかの障害が生じている状態と定義されます。

原因

失声症の原因は多岐にわたります。

器質的な原因:
反回神経の損傷: 甲状腺手術などの際に反回神経が損傷されると、声帯の動きが阻害され、失声症を引き起こすことがあります。また、腫瘍が神経を圧迫することも原因となります。
喉頭の異常: 喉頭炎やポリープ、腫瘍などが声帯の機能を妨げることで、声が出なくなることがあります。
呼吸器系の問題: 呼吸器系の疾患が重篤化し、十分な呼吸ができない場合、発声に必要な呼気が不足し、声が出なくなることがあります。

心因性の原因:
精神的なストレスや心的外傷: 強いストレスやトラウマ体験などが原因で、声が出なくなることがあります。これは、身体症状として現れる変換症の一種と考えられています。以前は「ヒステリー失声症」と呼ばれていたこともあります。
心因性発声障害: 発声器官に明らかな異常がないにもかかわらず、声が出なくなる状態を指します。心理的な要因が強く関与していると考えられています。

検査

失声症の原因を特定するためには、様々な検査が必要です。

内視鏡検査: 喉頭や声帯の状態を直接観察し、器質的な異常の有無を確認します。
神経学的検査: 反回神経などの神経系の機能を評価します。
心理検査: ストレスや心的外傷の有無、精神的な状態を評価します。

心因性失声症について

心因性の失声症は、発声器官に異常がないにもかかわらず、心理的な要因によって声が出なくなる状態です。これは、変換症の症状の一つとして現れることがあります。重要なのは、脳の言語野への物理的な障害による失語症とは異なるという点です。失語症は、語彙の記憶や言語の意味理解に困難をきたしますが、心因性失声症ではこれらの機能は保たれています。

また、場面緘黙という状態も存在します。これは、特定の状況下（例えば、親しい人の前では話せるが、他人とは話せないなど）でのみ声が出なくなる状態を指します。

治療

失声症の治療法は、原因によって異なります。

器質的な原因の場合:
手術や薬物療法など、原因となっている疾患に対する治療を行います。

心因性の原因の場合:
カウンセリング: 心理的なストレスやトラウマの原因を特定し、解決を支援します。
発声訓練: 声を出すための練習を行います。ハミングから始めたり、咳払いをきっかけに発声を促したりするなど、段階的なアプローチが用いられます。少しでも声が出たら褒めて、動機づけを高めることが重要です。
心理療法: 心的外傷後ストレス障害（PTSD）や解離性障害など、関連する精神疾患に対する治療を行います。

関連項目

緘黙
場面緘黙症
失語症
発語失行
発話障害
中途失聴
ヒステリー
解離性障害
* PTSD

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