奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律

奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律

1953年（昭和28年）に制定された「奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律」（以下、暫定措置法）は、第二次世界大戦後、アメリカ合衆国の統治下にあった奄美群島が日本に復帰するにあたり、法令の適用に関する経過措置や必要な特別措置を定めた日本の法律です。

法律制定の背景

1946年（昭和21年）よりアメリカ合衆国の統治下にあった北緯29度以南の鹿児島県大島郡（奄美群島）は、1953年（昭和28年）12月25日に日本に復帰しました。この復帰に際し、日本の法令をそのまま適用すると混乱が生じる可能性があったため、暫定措置法が制定されました。

法律の目的

暫定措置法は、奄美群島の復帰に伴い、法律や制度が円滑に移行するための措置を定めることを目的としています。具体的には、税法や地方自治、選挙制度、司法制度など、多岐にわたる分野で暫定的な措置が設けられました。

法律の内容

法令等の経過措置

復帰直後には、日本の税法などの法律が暫定的に施行されない措置が取られました。また、復帰前の市町村やその長、議員は、日本の地方自治法に基づくものとみなされました。さらに、市町村の条例や規則も、鹿児島県の条例や規則に抵触しない限り、有効とされました。従来の現地裁判所における民事訴訟も、原則として日本の法令によって行われたものとみなされました。これらの措置は、復帰に伴う混乱を避け、スムーズな移行を促すためのものでした。

衆議院議員選挙

暫定措置法の大きな特徴の一つとして、奄美群島全域を「奄美群島選挙区」とする衆議院議員選挙区が新設されたことが挙げられます。この選挙区は、当時としては珍しい定数1人の小選挙区でした。このため、衆議院議員の定数が一時的に467人に変更されました。これは、戦後初の国会議員定数変更であり、公職選挙法ではなく暫定措置法によって行われた点が特筆されます。

その後、1964年（昭和39年）に大都市の人口増加に伴い議員定数を変更することになった際、暫定措置法の議員定数や衆院選に関する規定は削除され、公職選挙法に引き継がれました。

簡易裁判所の設立

奄美群島には、名瀬簡易裁判所と徳之島簡易裁判所が設立されました。通常、簡易裁判所は「下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律」によって設立されますが、奄美群島の裁判所は暫定措置法によって設立されました。その後、1954年（昭和29年）に、暫定措置法の簡易裁判所に関する規定は削除され、「下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律」に引き継がれました。

関連する法令

奄美群島と同様に、第二次世界大戦後にアメリカ合衆国統治下から本土復帰した地域を対象とした法令として、以下のものが存在します。

鹿児島県大島郡十島村の区域に適用されるべき法令の暫定措置に関する政令（昭和26年12月21日政令第380号）
小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律（昭和43年法律第83号）
沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律（昭和46年法律第129号）

これらの法令は、それぞれの地域の特殊性を考慮しつつ、円滑な本土復帰を支援する役割を果たしました。

関連項目

奄美群島の歴史
本土復帰
公職選挙法
議員定数
裁判所法
* 奄美黒糖焼酎

暫定措置法は、奄美群島の復帰という歴史的な出来事において、法の役割がどのように機能したかを示す事例と言えます。また、戦後の日本の統治機構や制度設計を考える上で、重要な意味を持つ法律です。

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