奇想天外 (SF雑誌)

『奇想天外』の歴史と影響

『奇想天外』（きそうてんがい）は、1974年から1990年にかけて日本で出版されたSF雑誌です。この雑誌は、SFマガジンに次ぐ第2のSF専門誌として位置づけられ、奇想天外社や大陸書房を経て、数度の発行を行いました。最初の刊行は1974年の1月号で、その後1976年に再度の復刊が行われました。通称「奇天」とも呼ばれ、多くのSFファンに愛されました。

第1期（1974年）

第1期は、曽根忠穂を編集長に迎え、福島正実、小鷹信光が編集委員として参加しました。この時期の『奇想天外』は、翻訳中心の編集方針を取り、怪奇幻想系の短編集を多数掲載する路線を目指しましたが、1974年の10月号をもって休刊となりました。

第2期（1976-1981年）

その後、1975年11月に奇想天外社が設立され、1976年4月号から第2期が復刊されました。この際も編集長は曽根忠穂が続投しました。新しい『奇想天外』は、日本のSF作家の作品やコラムを中心に展開しており、翻訳SFは少なめでした。また、1980年代のアメリカSF作家の作品が多く取り上げられました。1981年10月号で幕を閉じるまでに、通算77号を発行しました。

この時期の特徴の一つは、新人作家へのサポートでした。夢枕獏がこの雑誌でデビューし、新井素子、谷甲州、牧野修、山本弘などの新しい才能が注目を集めました。さらに、石上三登志の「手塚治虫の奇妙な世界」や中島梓の「日本SF作家論シリーズ」といった評論も発表されました。筒井康隆による書評やコラムも多く、特に「みだれ撃ち涜書ノート」では新たな視点からのレビューが行われました。

SF作家たちの対談も名物企画となり、1978年には対談集『なぜSFなのか?』や『オレがSFなのだ』が刊行されました。さらに、別冊企画として『別冊・奇想天外』や『SFマンガ大全集』が発行され、これらは後の季刊誌『マンガ奇想天外』につながる流れとなりました。

第3期（1987-1990年）

第3期は大陸書房の下での発刊が行われ、1987年11月から1990年春号まで続きました。この時期は『小説奇想天外』という名称で、小説を中心に様々なジャンルの奇想天外な内容が掲載されました。また、編集長の曽根忠穂は『ホラーハウス』という漫画雑誌の編集も担当しながら、新たな挑戦を試みました。

この時期にはオリジナル作品が中心になり、翻訳作品は掲載されませんでした。評論家の大森望はこの雑誌の発行部数を数千部と推測していますが、ファンタジーブームに対応して、ファンタジー小説誌の『ネオ・ファンタジア』へのリニューアルも行われました。

アンソロジーと後の展開

『奇想天外』の影響を受け、さまざまなアンソロジーも出版されました。1988年には「てめえらそこをどきやがれ!―『奇想天外』傑作選」が発表され、続いて2017年には山口雅也編による復刻版と21世紀版が刊行されました。これにより、当時の優れた作品が再評価され、新たな読者にも届けられる機会を作りました。

以上が、『奇想天外』の概要と日本SF界における重要性です。この雑誌はただのSF刊行物ではなく、多くの作家や作品の登竜門であり、評論や批評を通じてSFの発展に寄与しました。

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