奇絶峡

奇絶峡は、和歌山県田辺市を流れる会津川の支流、右会津川の上流に位置する峡谷です。一般的には「きぜつきょう」と読まれますが、「きぜっきょう」や「きぜきょう」とも呼ばれることがあります。地元紀南地方では「きでっきょう」という発音も用いられます。この地域は吉野熊野国立公園（田辺地域）の一部に指定されており、豊かな自然が保護されています。

概要

奇絶峡は、会津川が田辺湾に注ぐ地点から約7km上流に位置します。約2kmにわたり、両岸には切り立った絶壁が迫り、奇岩や巨岩が連なる独特の景観が広がっています。峡谷沿いには桜の木が植えられており、春には美しい桜並木、秋には紅葉が楽しめます。また、周辺には近畿自然歩道が整備されており、ハイキングを楽しむことができます。

峡谷内には、不動明王を祀る不動滝（赤城滝）があり、赤い橋を渡って滝の近くまで行くことができます。滝の上には、堂本印象の原画を基にした不動明王の磨崖仏が彫られた一枚岩があります。水量が豊富で、場所によっては水深が深くなっているため、地元の子どもたちの水遊び場としても親しまれています。

地形

会津川は奇絶峡の上流では秋津川地区を流れ、なだらかな山間を緩やかに流れています。しかし、奇絶峡では両側の山が急に迫り、上流部のような渓流美を見せています。峡谷内には、両側の崖から転げ落ちたと思われる巨大な転石が数多く見られ、独特の景観を形成しています。

自然

奇絶峡は標高が低いながらも、急峻な山々と複雑な岩盤地形のため、特有の生物相が見られます。谷間には、ウバメガシを中心とした森林や、コジイやアラカシを主とする森林が発達し、深い緑に包まれています。峡谷上部には、より乾燥した森林が広がっています。かつてはアカマツが多く見られましたが、松くい虫の被害によりほとんどが枯れてしまい、現在でも枯れ木が点在しています。また、所々にはカギカズラの群生も見られます。岸壁にはシダ類が、渓流周辺にはフサナキリスゲなどの渓流植物が生育しています。過去にはウチョウランも生育していたと伝えられていますが、現在では確認されていません。

文化財

奇絶峡は、名勝「南方曼荼羅の風景地」の一部として、2015年（平成27年）10月7日に指定されました。

観光

奇絶峡へのアクセスは、JR紀伊田辺駅から龍神バスに乗り、「奇絶峡」バス停で下車すぐです。自然豊かな景色の中で、ハイキングや滝見物をお楽しみください。

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