峡谷

峡谷（きょうこく）とは

峡谷とは、渓谷の広がりに対してさらに深く、両岸が険しい崖状になっている細長い谷を指します。谷底には平地がなく、典型的にはV字形の断面を持つため、しばしば「V字谷」とも称されます。これらの峡谷は、地形学的には成熟した地形や急流河川の上流部で形成されることが特徴です。こうした地形では、侵食作用が非常に強く、土砂が激しく流出し、生成された土砂は中流や下流に堆積して扇状地を作り出します。

日本における峡谷

日本では、特に急流が多く、河川による侵食作用が活発なため、峡谷の形成が盛んです。日本各地には多様な形状を持つ岩が存在し、こうした自然美を活かして多くの峡谷が観光名所として親しまれています。「○○峡」と名付けられることが多く、地域に根付いた景勝地として地元住民から愛されています。近年では、遊歩道が整備されている場所も多く、ハイキングや自然観察を楽しむ観光客が訪れるスポットとなっています。また、手つかずの自然が残る場所はエコツーリズムや本格的なトレッキングの場としても人気を集め、自然と触れ合う機会を提供しています。

一方で、多くの峡谷はダム建設の候補地として選ばれることがあり、その結果、歴史的な景勝地が失われるという悲しい現実も存在します。現在でも、ダム計画に反対する住民の運動が多く見られ、地域によってはダム賛成派と反対派の対立が続いているところもあります。

日本で有名な峡谷

日本国内の主要な峡谷を以下に挙げます。地域ごとに特色があり、それぞれに個性的な自然景観が広がっています。

北海道

- 層雲峡
- 天人峡
- 豊平峡
- 岩内仙峡
- 赤岩青巌峡

東北地方

- 馬仙峡（岩手県）
- 鳴子峡・二口峡谷（宮城県）
- 小又峡・小安峡・藤里峡・岨谷峡（秋田県）
- 最上峡・赤芝峡（山形県）
- 塔のへつり（福島県）

関東地方

- 竜神峡（茨城県）
- 龍王峡・瀬戸合峡（栃木県）
- 吾妻渓谷、照葉峡・高津戸峡（群馬県）
- 三波石峡（群馬県・埼玉県）
- 中津峡（埼玉県）
- 御岳昇仙峡（山梨県）

中部地方

- 清津峡・ヒスイ峡・橋立ヒスイ峡・荒川峡（新潟県）
- 黒部峡谷・神通峡・庄川峡（富山県）
- 天竜峡・内山峡・寝覚の床・横谷峡（長野県）
- 恵那峡・蘇水峡・深沢峡・付知峡・飛水峡・揖斐峡・横谷峡（岐阜県）
- 寸又峡・接岨峡・山王峡・世古峡（静岡県）
- 鳳来峡・勘八峡・下山峡（愛知県）
- 大杉谷・宮妻峡・多度峡・香肌峡・宮川峡（三重県）
- 手取峡谷（石川県）
- 九頭竜峡（福井県）

近畿地方

- 醒井峡谷（滋賀県）
- 保津峡・夢絃峡（京都府）
- 摂津峡（大阪府）
- 蓬萊峡・立雲峡（兵庫県）
- 瀞峡（奈良県・和歌山県・三重県）

中国地方

- 匹見峡・立久恵峡・鬼の舌震など（島根県）
- 井倉峡（岡山県）
- 三段峡・帝釈峡・神之瀬峡など（広島県）
- 寂地峡・長門峡・深谷峡（山口県）

四国地方

- 大歩危・小歩危・高の瀬峡・祖谷渓（徳島県）
- 別府峡（高知県）

九州地方

- 日向神峡・上野峡（福岡県）
- 川上峡（佐賀県）
- 轟峡（長崎県）
- 蘇陽峡・仙酔峡（熊本県）

日本にはこのように多くの峡谷が存在しており、各地の自然美や文化を体感することができます。観光や自然活動を通じて、峡谷の魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。

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