吉野熊野国立公園

吉野熊野国立公園

吉野熊野国立公園は、奈良県、三重県、和歌山県の3県にまたがる広大な国立公園です。その総面積は59,798ヘクタールに及び、紀伊半島の中央部から南西岸にかけて、山岳、河川、海岸と多様な自然景観が広がります。公園は大きく3つのエリアに分かれており、それぞれが異なる魅力を持っています。

公園の概要

公園は、以下の3つのエリアで構成されています。

山岳部: 吉野・大峰山を中心とする山岳地帯。大峰山脈と大台ヶ原一帯から成り、古生代や中生代の変成岩を主とする山々が連なります。吉野山から八剣山（仏経ヶ岳）まで、修験道の行場としても知られ、社寺や文化財が数多く存在します。

河谷部: 熊野川とその支流である北山川流域。特に北山川は、V字谷を刻む激しい浸食地形が特徴で、瀞峡と呼ばれる景勝地があります。

海岸部: 熊野灘や枯木灘に面した海岸線。リアス式海岸、礫浜、海食地形など、変化に富んだ景観が楽しめます。また、黒潮の影響で温暖な気候であり、亜熱帯植物やサンゴ礁が見られるのも特徴です。

各エリアの詳細

山岳部

山岳部は、大峰山脈（大峯山脈）と大台ヶ原一帯（台高山脈）の2つの主要な山岳地帯で構成されています。

大峰山脈: 吉野山を北端とし、山上ヶ岳、大普賢岳、弥山、釈迦ヶ岳などが連なる山脈です。古くから修験道の行場として知られ、多くの社寺や文化財が残されています。特に、熊野三山（熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社）は、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として登録されており、その歴史的、文化的価値は非常に高いです。山脈の最高峰は八剣山（仏経ヶ岳）で、標高は1914.6mです。

大台ヶ原: 標高1500m前後に広がる隆起準平原で、多雨地帯としても知られています。ブナやトウヒなどの原生的な樹林が広がり、シカやカモシカ、多くの鳥類や昆虫類が生息する豊かな生態系が特徴です。

河谷部

河谷部は、熊野川とその支流である北山川流域で構成されています。これらの川は、大峰山脈や大台ヶ原を源流とし、紀伊半島の中でも特に多雨な地域を流れています。

北山川: 中・下流域で激しい浸食と蛇行を繰り返し、深いV字谷を形成しています。特に、九里峡から奥の渓谷にかけては瀞峡として知られ、その美しい景観は多くの人々を魅了します。瀞峡は下瀞、上瀞、奥瀞に分かれ、下瀞の上流は瀞八丁として国の特別名勝に指定されています。

熊野川: 北山川との合流後も、新宮市内の千穂ヶ峯付近まで、侵食崖や岩壁、滝などの景観が続き、訪れる人々を楽しませます。

海岸部

海岸部は、海食や地質活動によって形成された、変化に富んだ奇観が数多く見られます。大きく3つのエリアに分けられます。

尾鷲から鬼ヶ城: リアス式海岸が続き、複雑な海岸線が特徴的です。

鬼ヶ城から新宮: 七里御浜と呼ばれる直線的な礫浜が広がり、海岸林が整備されています。

新宮から潮岬: リアス式海岸と海食地形が発達しています。特に、太平洋岸には海蝕洞や海蝕崖が多く見られます。この地域は黒潮の影響で温暖であり、亜熱帯植物が自生し、串本海中[[公園]]ではサンゴ礁や熱帯魚を見ることができます。

また、那智勝浦の内陸部にある那智山一帯は、那智原始林や那智滝など、自然信仰に基づいた歴史的な場所が点在しています。

2015年には、和歌山県内の県立自然公園が編入され、千里の浜や天神崎、三段壁などの海岸景観が公園に含まれるようになりました。

その他の情報

観光名所

寺社: 金峯山寺、熊野三山、青岸渡寺など、歴史と信仰が息づく寺社が多く存在します。
温泉: 洞川温泉、川湯温泉、湯の峰温泉、南紀勝浦温泉、南紀白浜温泉など、豊かな自然に囲まれた温泉地があります。
* ビジターセンター: 公園内の情報を収集できる施設です。

関係自治体

公園は、奈良県、三重県、和歌山県の多くの自治体にまたがっています。

その他

吉野熊野国立公園は、南紀熊野ジオパークの一部でもあり、自然と歴史、文化が融合した魅力的な場所です。また、「吉野熊野国立公園の父」とも呼ばれる岸田日出男は、この公園の発展に大きく貢献しました。

公園に関する情報は、環境省や各県の観光連盟のウェブサイトで入手できます。

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