奈良県立桜井商業高等学校

奈良県立桜井商業高等学校は、奈良県桜井市河西にかつて存在した県立の商業高等学校です。略称として「桜商（さくしょう）」の呼び名で親しまれていました。

概要

本校は、1963年（昭和38年）4月に商業に関する専門高校として開校しました。設置課程は全日制で、学科は商業科のみでした。時代の変化に対応し、専門性を高める教育を目指しましたが、奈良県立志貴高等学校との統合計画が進められ、新設合併により奈良県立奈良情報商業高等学校が設置されることとなり、2007年（平成19年）3月31日をもってその歴史に幕を閉じ、廃止されました。

教育理念

学校の教育目標は、日本国憲法、教育基本法、学校教育法の精神に基づき、知識、徳性、身体のバランスが取れた人格の形成を図るとともに、人権尊重を基盤とする民主的な社会の創造に貢献できる人材を育成することでした。この目標達成に向け、以下の教育方針が掲げられていました。

知性と教養を深め、自己を見つめ自立できる人間を育む。
強靭な体力と精神力を養い、情操豊かな心身ともに健康な人間を育成する。
適切な勤労観と職業観を持ち、地道な努力を惜しまない人間を養成する。
人権を尊重し、使命感と責任感をもって正しく生きる人間を育てる。
* 国際理解を深め、国際協調に貢献する態度を養う。

沿革

桜井商業高等学校の設立は、1962年（昭和37年）10月5日の奈良県立高等学校設置条例改正の議決によって決定されました。翌1963年 4月10日に開校式と第1回入学式が挙行され、教育活動が本格的に開始されました。学校施設の整備も進み、同年8月には校舎本館と南館が完成しました。

本校は教育研究にも熱心に取り組み、県教育委員会や文部省（当時）から様々な研究指定を受けました。1967年および1985年には「生徒指導研究推進校」に、1987年には「学習指導研究推進校」に指定されました。また、1990年代には「外国語チームティーチング研究推進校」（1990年）、文部省指定の「社会の変化に対応した新しい学校運営等に関する調査研究協力校」（1992年）、文部省・県教委指定の「教育課程研究推進校」（1995年）、県教委指定の「特色と魅力のある学校づくり推進校」（1995年）となるなど、多岐にわたる分野で研究を推進しました。

商業高校として、情報教育施設の拡充にも力が入れられました。1986年には情報処理実習教室、1987年にはワープロ実習教室が竣工し、1990年には総合実践室、1995年には第2情報処理室が整備されました。これらの施設を活用した専門教育が行われました。

地域や社会との連携、国際理解教育も積極的に行われました。1986年には第1回「桜商ストア」が開催され、実践的な商業教育の場となりました。2000年には県立高校として初めての「シンガポール修学旅行」を実施し、国際的な視野を広げました。また、2001年には県内の商業科で初めて「インターンシップ（就業体験）」を実施し、生徒の職業観育成に力を入れました。2003年には雇用能力開発機構指定の「中高生に対する仕事ふれあい活動支援事業協力校」、2004年には文部科学省指定の「キャリア教育推進地域指定事業に係る実践協力校」となるなど、キャリア教育の推進にも貢献しました。

創立30周年を迎えた1992年 9月19日には記念式典が挙行され、学校の歩みが祝われました。

しかし、奈良県内の高校再編計画に伴い、2004年 6月25日の条例議決により、奈良県立志貴高等学校との統合、そして新たな高校である奈良県立奈良情報商業高等学校の設置が決定されました。これに伴い、桜井商業高等学校は2005年度以降の生徒募集を停止することが同年9月17日に公表されました。2005年 4月1日からは、新設された奈良情報商業高等学校との校地共用が始まり、在校生のみが桜井商業高等学校の生徒として学びを続けました。そして、在校生の卒業を待って、2007年 3月31日に閉校となりました。

設置学科

閉校時点では、全日制課程に商業科が設置されていました。商業科の中には、会計コース、情報処理コース、国際商業コースの3つの専門コースが設けられていましたが、生徒募集はこれらをまとめて「くくり募集」として行っていました。閉校時の商業科の定員は600名でした。

学校の象徴

校章は、桜井市内の茶臼山古墳から出土した「玉杖」をモチーフとしてデザインされました。これは、古代の人々が大陸や半島の文化を学び取った証である玉杖に想いを馳せ、新しい時代を切り拓く学び舎としての誓いを象徴していました。

校歌は、作詞を大峯顕堯氏、作曲を奈良教育大学名誉教授の牧野英三氏が手掛けました。校名は歌詞中に登場せず、全2番で構成されています。

所在地とアクセス

学校は奈良県桜井市河西770番地に位置していました。最寄りの交通機関は近鉄大阪線またはJR万葉まほろば線の桜井駅で、駅から南へ約1.5km（徒歩約20分）の距離でした。

学校関係者

桜井商業高等学校および統合後の奈良情報商業高等学校の卒業生による同窓会組織として「たまつえ会」があります。また、生徒保護者による保護者会組織として「奈良県立桜井商業高等学校育友会」が存在しました。

著名な出身者としては、プロ野球界で活躍した東利夫氏（元阪神タイガース外野手、プロ野球審判員）、駒田徳広氏（元プロ野球選手）、田中宏和氏（元プロ野球選手）や、実業界では株式会社ジョイフルの元代表取締役社長である長尾一徳氏などがいます。

その約44年間の歴史の中で、桜井商業高等学校は多くの商業分野の人材を育成し、地域社会に貢献しました。閉校後、その敷地と校舎は奈良県立奈良情報商業高等学校に引き継がれています。

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