奈良茂左衛門

奈良茂左衛門（なら もざえもん）は、元禄8年（1695年）に生まれ、享保10年9月3日（1725年10月8日）に31歳で没した江戸時代の材木商です。通称を奈良茂（ならも）といい、奈良屋茂左衛門の五代目を務めました。初名は戌松（いぬまつ）、名は広璘（こうりん）、号は泰我（たいが）・安知と称しました。

人物と経歴

奈良茂左衛門は、代々深川黒江町で材木商を営む家に生まれました。先代から40万両という巨額の遺産を受け継ぎ、その財力で吉原に出入りし、贅沢の限りを尽くしたと伝えられています。特に吉原中万字屋の名妓・玉菊を深く愛し、彼女のために多くの金を使ったとされています。

玉菊は酒を好んだことが原因で病に倒れ、亡くなってしまいます。茂左衛門は玉菊の死を深く悲しみ、「いと早くうつろひそむる菊よりも心しほるる秋の夕ぐれ」という歌を詠んで彼女を弔いました。享保元年（1716年）には、玉菊の一周忌追善供養を行い、俳諧師の乾什に河東節の詞を依頼し、十寸見河丈、山彦源四郎に作曲させました。そして、完成した楽曲を『水調子』と名付けて演奏させたと言われています。さらに、その年の盂蘭盆会には、吉原の茶屋の軒ごとに燈籠を飾り、玉菊の精霊を祀らせるなど、手厚い供養を行いました。

その後、茂左衛門は上方に赴きますが、帰路に病に倒れ、享保10年（1725年）に31歳という若さで亡くなりました。短くも波乱に満ちた生涯だったと言えるでしょう。

関連事項

* 奈良屋茂左衛門

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