河東節

河東節（かとうぶし）

河東節は、日本の伝統的な浄瑠璃のひとつであり、古き良き曲の形式を継承した重要無形文化財です。この節は、江戸時代に江戸半太夫の弟子である江戸太夫河東によって1717年に創始されました。初期の河東節は、半太夫節に加えて式部節の要素も取り入れており、その語り口は非常に独特で魅力的でした。このため、庶民の間で広く親しまれる浄瑠璃として成長しましたが、次第に豊後節や常磐津節などの影響を受け、その人気が減少していきました。

江戸中期からは、河東節は特にお座敷での素浄瑠璃として愛好され、主に裕福な家庭や吉原といった場所で鑑賞されることが多くなりました。特に河東節の発展に寄与したのは、二代目および三代目の河東であり、彼らは吉原に居住し、さらには初代から三代目の蘭洲が妓楼の主であったとも言われています。このように、河東節はその歴史を通して、庶民から富裕層に渡って愛される独特な文化を形成しました。

特筆すべきは、その三味線の使用法です。河東節では、細棹の三味線が用いられ、語り口調は豪快でスッキリしたものが特徴です。また、この節は後に山田流箏曲にも影響を与えていることからも、その音楽的な深みが窺えます。

河東節の重要な保持者として認定されているのは、浄瑠璃の山彦節子さんと三味線の山彦千子さんです。彼女たちはこの伝統芸能を後世に伝える貴重な存在です。

助六における河東節

歌舞伎の演目には数多くの浄瑠璃が使用されますが、現在河東節が用いられるのは『助六由縁江戸桜』（すけろく ゆかりの えどざくら）のみです。この演目の前身である『英分身曾我』（はなぶさ ぶんしん そが）は、1733年に市村座で初めて上演されました。良く知られる「出端の唄」の曲名は、早くもその際に「所縁江戸櫻」として知られるようになりました。

この唄は、市村座で助六を演じる役者たちの専用として用いられるようになると、さらにその使用権は成田屋市川宗家に限定される傾向がありました。つまり、他の家が『助六』を演じようとする際には、成田屋に配慮して「出端の唄」を他の浄瑠璃形式に書き換えることが一般的となりました。この風習によって、演目名も奏された曲に準じて変えられる独特の文化が形成されました。

河東節の主な曲目

河東節には様々な曲目が存在し、以下のような名曲が含まれています。

• - 松の内（まつのうち）
• - きぬた（半太夫節より移曲）
• - 式三献神楽獅子（しきさんごんかぐらじし）
• - 隅田川舟の内（すみだがわふねのうち）
• - 児桜竹馬の鞭（ちごさくらたけうまのむち）
• - 江の島（えのしま）
• - 灸すゑ巌の畳夜着（きゅうすえいわおのたたみよぎ）
• - 一瀬川（ひとせがわ）
• - 傾城水調子（けいせいみずちょうし）

... (他の曲目も数多く存在します)

河東節は、江戸時代より続く貴重な日本の文化であり、その伝統が今日でも受け継がれています。

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