奈良街道 (京都府)

奈良街道と大和街道：京都と奈良を結ぶ歴史の道

古くから奈良（大和国）と京都（山城国）を繋いできた街道は、その経路や呼び名に歴史的な変遷が刻まれています。一概に「奈良街道」と呼んでいますが、実際には複数のルートが存在し、時代や状況によって「大和街道」という呼称も用いられてきました。この記事では、これらの街道の経路、歴史的変遷、そして「奈良街道」と「大和街道」の名称の違いについて詳しく解説します。

奈良街道の変遷：古代から現代へ

奈良街道の起源は、古代の官道に遡ります。北陸道から平城京へと続くこの道は、逢坂関を越え、山科盆地を南下し、宇治川右岸沿いに宇治を経由して奈良へと至るルートでした。平安京遷都後も、巨椋池を避けるため、深草大亀谷～六地蔵～宇治を経由するルート（現在のJR奈良線とほぼ並行）が主要な経路となりました。

豊臣秀吉による伏見城築城に伴い、宇治川が改修され、伏見から向島に渡り、小倉堤上の道を経由する新たな街道が整備されました。これが「大和街道」と呼ばれるようになった始まりです。昭和初期の巨椋池干拓により、観月橋から二の丸池跡を国道が通るようになり、京都と奈良の幹線道路としての役割を担うようになりました。そして現在、京都と奈良を結ぶ国道24号に「奈良街道」の愛称が付けられています。

「奈良街道」と「大和街道」：呼び名の違い

「奈良街道」と「大和街道」はどちらも奈良へ向かう街道を指しますが、京都府内では微妙な違いを持って使われています。明治時代の京都府令では、伏見街道（後に竹田街道）を経て伏見から巨椋池の小倉堤上を通るルートを「大和街道」、深草から大亀谷、八科峠、宇治を経由するルートを「郡山街道」と定義していました。その後、「奈良街道」として、東海道から山科盆地を南下し、六地蔵から宇治川右岸を経て伏見観月橋で大和街道と合流するルートが加えられました。

現在では京都と奈良間の街道を広く「奈良街道」と呼びますが、小倉堤上のバイパス部分に関しては、歴史的経緯から「大和街道」と呼ばれることが多いです。国道24号に「奈良街道」の愛称が付いているものの、京都市内、特に伏見周辺では「奈良街道」という名称はあまり使われず、「竹田街道」という名称が定着しているのは、伏見が大阪方面への玄関口でもあったこと、そして現在の国道24号の経路が竹田街道に沿っていることなどが理由として挙げられます。山科盆地内にも「奈良街道」と名付けられた道路が存在するため、混同を避ける意味合いもあるでしょう。

京都府内における奈良街道・大和街道の区間

京都府内で「奈良街道」あるいは「大和街道」と呼ばれていた区間を以下に示します。

1. 大和街道（小倉堤上の道）： 伏見から観月橋を渡り、巨椋池の小倉堤上を通過し、西目川、槇島を経て大久保で宇治からの道と合流し、奈良へと続きます。秀吉が整備したこのルートは、江戸時代から明治時代にかけて「大和街道」と呼ばれ、現在でも観月橋から大久保までの区間は「大和街道」と呼ばれることが多いです。

2. 山科盆地内（髭茶屋追分から六地蔵）： 東海道の髭茶屋追分から南西へ進み、大宅、小野、醍醐を経て六地蔵に至るルートです。明治時代には、六地蔵から宇治川右岸を経て観月橋までの区間を含め「奈良街道」と位置付けられていました。現在では、新道が「奈良街道」、旧道が「旧奈良街道」と呼ばれています。

3. 巨椋池東岸（六地蔵から宇治を経て大久保へ）： 六地蔵から木幡、宇治を経て大久保で大和街道と合流するルートです。明治時代には「郡山街道」の一部とされ、現在では「奈良街道」と呼ばれています。

これらのルートは、時代や整備状況によって変化し、現在の国道24号「奈良街道」へと繋がっています。歴史的な経緯や、それぞれのルートの地理的な特徴を理解することで、より深く奈良街道の歴史を堪能することができるでしょう。

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