奈良電気鉄道デハボ1100形電車

奈良電気鉄道デハボ1100形電車

奈良電気鉄道デハボ1100形電車は、第二次世界大戦後の混乱期における輸送需要の逼迫に対応するため、奈良電気鉄道（奈良電）が導入した電車の一形式です。同時期に設計された姉妹形式であるクハボ700形電車についても、運用面で密接な関わりがあったため、本項では併せて解説します。

概要

終戦直後の日本は、燃料不足と食糧難から、鉄道は都市部と農村を結ぶ重要な輸送手段となっていました。しかし、戦時中の酷使により、奈良電の主力車両であったデハボ1000形の稼働率は低下し、輸送力不足が深刻化していました。そのような状況下で、奈良電は車両増備を急務としましたが、資材不足のため独自設計の車両を調達することは困難でした。

そこで、運輸省主導で規格型電車が企画され、奈良電にもその製造割り当てが認められることとなりました。こうして誕生したのが、規格型電車のB型仕様に準拠したデハボ1100形とクハボ700形です。1948年2月に近畿車輛で6両が製造されました。

デハボ1100形：両運転台式制御電動車 (1101 - 1103)
クハボ700形：片運転台式制御車 (701 - 703)

車体

車体は、運輸省規格型電車（B型）に準拠した半鋼製で、車体長15,000mm、車体幅2,600mmです。乗り入れ先の近畿日本鉄道奈良線の主力車両であるモ600形を基本としつつ、車体幅と車体長を若干拡大した設計となっています。窓配置は、デハボ1100形がd2(1)D5D(1)2d、クハボ700形がd2(1)D6D(1)2で、座席はロングシート、通風器はガーランド式です。

主要機器

主要機器には、規格設計品が多数採用されています。

主電動機：東洋電機製造TDK-553/2BM (90kW)
制御器：東洋電機製造ES-155-A電動カム軸式制御器
集電装置：東洋電機製造PT-24菱枠パンタグラフ
台車：扶桑金属工業KS-33L (ボールドウィンA形)
* ブレーキ：日本エヤーブレーキ製M三動弁によるM自動空気ブレーキ

運用

デハボ1100形は、奈良電にとって戦後初の新造車であり、近畿日本鉄道への吸収合併まで同社の主力車種として活躍しました。1953年には、一部車両の座席がクロスシートに改造され、旅客サービスの向上が図られました。

1965年には、近鉄が京都 - 橿原神宮駅間に有料特急を新設する際、予備特急車の不足を補うため、モ671・672（旧デハボ1102・1103）が特急の代走として運用されるという異例の事態が発生しました。これは、クロスシートを備えていた同車が、特急用車両の検査時などに臨時代走できる設備を持っていたためです。しかし、18000系の増備により、同年6月には特急代走の任を解かれました。

昇圧と廃車

特急代走終了後、モ671・672はロングシートに戻され、1969年の京都・橿原線の昇圧時に400系に編入されました。同時に、制御方式の変更などの改造が行われ、モ400形403・404となりました。ク571 - 574も同様に改造され、ク300形301 - 304となりました。これらは、モ400形とク300形で2両固定編成を組み、主に生駒線などの支線区で運用されましたが、老朽化により1976年から1977年にかけて全車廃車されました。

現在、デハボ1100形およびクハボ700形は現存していません。

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