奥付

奥付（おくづけ）についての解説

奥付は、書籍の本文が終了した後や巻末に位置し、書誌に関する情報がまとめられた部分を指します。この慣習は主に和書に見られ、日本特有の文化として発展してきました。洋書にはこのような形式は一般的ではなく、通常は扉の部分に標題や著者名、出版社、出版年などが記載されるにとどまります。

奥付の特徴

和書における奥付は、特にその形式に関して決まった形が存在しないため、書籍によって内容や表現は異なります。丸山の研究によれば、スラブ系やラテン系の国々にも奥付に相当する慣習はあるものの、和書の奥付ほどの体系的なものではないとのことです。洋書においては、奥付に似た機能を持つ「コロフォン」という用語が存在しますが、その起源や目的には違いがあります。

歴史的背景

奥付の起源は江戸時代にさかのぼります。1722年に制定された大岡忠相による法令によって、新しい書籍に対して作者や版元の実名を奥書に記載することが義務付けられました。この法令は、海賊版や偽版の横行を防ぐために導入され、正規版の権利を明確にすることを目的としていました。

明治時代に入ると、1893年の出版法により、発行者の氏名や印刷所の名称、印刷日などを記載することが義務付けられることとなり、現在の奥付に見られる形式が作られました。これ以降、義務付けはされていないものの、奥付を残す慣習は引き続き受け継がれています。また、教科書に関しては特別な法律により、発行者や印刷業者名等の記載が求められています。

書誌事項の内容

一般的に、奥付には以下のような情報が記載されます：

• - 題名：書籍の正式なタイトル
• - 著者・訳者・編集者：著作権に関する情報
• - 発行者：書籍を出版した会社や個人の名称
• - 発行所：出版社の所在地及び名
• - 印刷所：実際に印刷を行った業者の情報
• - 製本所：製本を担当した業者の名
• - 著作権表示：著作権に関連する情報
• - 発行年月、版数、刷数：書籍の世代や印刷部数の情報
• - ISBNコード：国際標準図書番号
• - 価格：書籍の販売価格（特に教科書の場合は明記されないことが多い）

奥付は「奥附」とも表記されますが、当用漢字の改正により「奥付」という表記が主流となっています。その名称は、書物の奥の位置から名付けられたものですが、刊記とも呼ばれることがあります。

奥書との違い

奥書（おくがき）という語もありますが、これは一般に書物の最後に筆写者が記した来歴などの情報を指します。古い写本などには、参考にされた元の書籍の奥書も添えられることがあり、その内容は書物の歴史を知る上で貴重な資料となります。

現代における利用

奥付証明や奥書証明とは、資格を取得する際に必要な証明書に関して、コピーが原本と同じものであることを示すための記述です。このように、新聞や書籍だけでなく、多様な文書に影響を及ぼす奥付の役割は広がっています。

奥付は単なる書誌情報にとどまらず、出版の過程や著作権、版権の概念、さらには文化的な背景を示す大切な要素となっています。

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