奥山泰全

奥山泰全（おくやま たいぜん、1971年8月13日生まれ）は、日本の実業家です。三重県津市出身で、慶應義塾大学商学部を卒業後、金融業界を中心にそのキャリアを築きました。

経歴と人物像

奥山氏は、主に株式会社マネーパートナーズグループの代表取締役社長として知られています。2006年8月に同社の社長に就任し、2020年11月までの約14年間にわたり経営のトップを務めました。これに先立つ期間、2000年から2006年まではトレイダーズ証券の取締役に名を連ねています。

経営者としての手腕に加え、奥山氏には「相場師」「コンピュータエンジニア」「マーケター」という三つの多角的な側面があります。これらの専門知識と経験を駆使し、金融業界における様々な革新や発展に貢献してきました。

相場師としての側面

投資家としての奥山氏は、1990年代初頭に著名な相場師である林輝太郎氏に師事したことからその道が始まりました。当初は現物株投資からスタートし、その後、ツナギを主とする信用取引、商品先物市場（小豆、とうもろこし、パラジウムなど）へとその活動範囲を広げました。

特に、1993年からの日経平均先物取引、そして1994年からの日経225オプション取引において、相場師としての非凡な才能を発揮しました。彼の投資手法は、トレンドフォロー（順張り）を基軸としつつ、アービトラージ（サヤ取り）の考え方を応用したオプション取引におけるデルタヘッジを組み合わせて展開されました。投資に対する姿勢は冷静かつ着実であり、「粛々と稼ぐ」という言葉をしばしば口にしていました。

また、株式会社パンローリング代表取締役である後藤康徳氏とは、兄弟盃を交わす深い親交があることでも知られています。

コンピュータエンジニアとしての側面

奥山氏は、日本の金融市場におけるIT活用の黎明期から深く関与し、技術者としての側面も持ち合わせています。特に、日本で初めて日経平均先物・オプション取引のインターネット取引を実現したシステムの開発における貢献は特筆されます。FX取引システムの開発にも初期段階から多く関与し、シンプレクスコンサルティング、スリーエイシステム、エンコムシステムズといった主要なデリバティブ取引システム開発プロジェクトに携わりました。

大規模なシステム移行プロジェクトも数多く統括しており、証券バックシステムやFXシステムの刷新などに手腕を発揮しました。古くは、1998年には三井情報開発（MKI）にて、連結決算システムのプロジェクトマネージャーを務めた経験もあります。

金融機関の技術部門責任者としても活動し、トレイダーズ証券の取締役CIO（最高情報責任者）や、現株式会社SBIトレードウィンテック（当時はトレイダーズフィナンシャルシステムズ）の取締役などを歴任しました。開発言語はJAVA、C++、Delphi、BASIC、アセンブラ、COBOL、RPG、Perlなど多岐にわたり、RDBMSもOracle、SQL Server、PostgreSQLといった主要なものを扱うことができるなど、広範な技術的知識と実務経験を有しています。

マーケターとしての側面

自身の豊富な投資経験や金融システムに関する知識を広く伝えるための活動も積極的に行っています。投資や起業に関する著書を複数出版しており、専門的な内容を分かりやすく解説することに努めています。また、これらのテーマで多くの講演を行い、金融リテラシーの向上や起業家精神の醸成に寄与しています。主な著書には、『崖っぷち投資家ボコられ経営塾』、『株式投資金の本』、『株式投資銀の本』、共著に『トップトレーダーズ2004』（砂田洋平氏）や『株式投資入門の入門』、『お金がずっと増え続ける 投資のメソッド－アイドルのわたしでも。』（高山一実氏）などがあります。

協会活動と交友関係

2018年から2020年にかけては、日本仮想通貨交換業協会（現在の日本暗号資産取引業協会）の会長を務め、黎明期にあった日本の暗号資産交換業界における自主規制体制の構築や発展に尽力しました。

また、公認会計士の澤昭人氏、株式会社ジャフコ取締役の渋澤祥行氏、株式会社TKP代表取締役社長の河野貴輝氏、音楽プロデューサーの伊藤啓史氏、元電通プランナーの西山英一郎氏といった、各界で活躍する多様な人物との幅広い交友関係を持っています。

奥山泰全氏は、金融業界における経営者、革新的なシステムを構築するエンジニア、冷静な投資判断を行う相場師、そして知識の普及に努めるマーケターとして、日本の金融市場、特にオンライン取引、デリバティブ、そして暗号資産といったフロンティア領域において、多角的な貢献を果たしてきた人物と言えるでしょう。

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