奥村信太郎

奥村 信太郎（おくむら しんたろう）は、明治から昭和にかけて活躍した日本のジャーナリストで、毎日新聞社の社長を務めました。1875年9月22日、東京府荏原郡品川村（現在の東京都品川区北品川）に、父奥平昌邁と母岡見りきの間に誕生します。奥平家の菩提寺である清光院の住職、奥村成岳の長男として戸籍に入りました。

慶應義塾幼稚舎で学び始め、1896年12月に慶應義塾大学文学部を卒業。在学中には、文豪として知られる森鷗外から美学の教えを受けました。卒業翌年の1897年1月、出版社である博文館の編集局に入社しますが、1899年には退社し、真宗日報（後の広島日報）の主筆として広島へと赴任します。しかし、翌1900年には個人的な問題（道楽が原因とされる）により夜逃げ同然で東京へ戻るという波乱も経験しました。

1901年4月、慶應義塾長であった鎌田栄吉の推薦を受け、大阪毎日新聞社に入社し、通信部員となります。日露戦争が開戦すると、1904年3月には陸軍の許可を得て従軍記者となり、第1軍に同行して戦地の様子を伝えました。同年9月に帰社した後、1906年12月には通信部副部長に昇進し、東西連絡部員や学芸部員も兼務します。1907年10月には、同社初の海外派遣記者として欧米視察に出発。翌1908年5月に帰国し、見聞を広めました。

その後、社内で要職を歴任していきます。1909年5月に内国通信部長心得、同年6月には社会部員を兼務。1910年9月に正式に内国通信部長となり、1912年7月には社会部長に就任します。1919年2月には再び内国通信部長を兼務し、1920年5月には編集副主幹兼社会部長となりますが、翌6月には社会部長の兼務を解かれます。1922年4月に編集主事、同年6月には重役待遇となり、1924年9月には編集総務に就任。1926年7月には常務取締役兼編集総務となり、同年9月からは印刷局長も兼務するなど、経営の中枢に深く関わるようになります。

さらに、1932年2月には東京日日新聞社（毎日新聞社の前身の一つ）の編集主幹を務め、1933年3月には大阪毎日新聞社の営業局長に転じます。同年10月には専務取締役兼大阪毎日新聞社営業局長となり、社内での地位を不動のものとしました。

そして1936年1月、ついに毎日新聞社の社長に就任します。戦時下を経て、日本の敗戦を迎えた1945年8月29日に社長を辞任し、相談役となります。同年11月28日には相談役を解かれ、最高顧問に就任。しかし、1946年2月16日に最高顧問も辞任します。1947年8月には公職追放の対象となりました。

公職追放後は、自身の経験を綴った回想録『新聞に終始して』（文藝春秋新社、1948年刊）を執筆するなどして過ごしました。追放が解除されることのないまま、1951年3月4日に萎縮腎に尿毒症を併発し、75歳でこの世を去りました。その生涯は、日本の近代新聞が激動の時代を歩む過程と深く結びついていました。

参考文献として、『奥村信太郎伝記刊行会編『奥村信太郎　日本近代新聞の先駆者』』（1975年）があります。

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