奥様武勇伝

奥様武勇伝：ハリウッド黄金期の光と影

1948年、アメリカ映画界で華々しく公開された『奥様武勇伝』（原題: Julia Misbehaves）は、数々の才能が結集した作品として知られています。マージェリー・シャープの小説『ナツメグの木』を原作に、ジャック・コンウェイ監督がメガホンを取り、ハリウッドを代表するスター、グリア・ガースンとウォルター・ピジョンが再び共演を果たしました。二人の共演作としては本作が5作目となり、息の合った演技が観る者の心を掴みました。興味深いことに、この作品はコンウェイ監督にとって最後の監督作品ともなっています。

映画の内容は、一見、軽妙洒脱な家庭劇のように見えますが、奥深い人間ドラマが展開されます。主演のグリア・ガースンが演じるジュリアは、奔放で自由奔放な女性像であり、その行動は周囲に波紋を広げていきます。対するウォルター・ピジョン演じるウィリアムは、そんなジュリアを理解しつつも、時に悩まされる夫という役どころです。二人の掛け合いは、笑いと感動を織り交ぜながら、夫婦のあり方や人生の意味といった普遍的なテーマを問いかけます。

さらに注目すべきは、子役時代のエリザベス・テイラーの出演です。本作で、ジュリアとウィリアムの娘、スーザン役を演じたテイラーは、すでにその高い演技力で観客を魅了しました。後にハリウッドを代表する大女優となる彼女の若き日の姿は、映画史における貴重な記録となっています。

豪華なキャスト陣だけでなく、スタッフ陣もハリウッドを代表する実力者たちが集結しました。製作のエヴェレット・リスキン、脚色のモンクトン・ホッフェ、ジーナ・カウス、ウィリアム・ルドウィグ、ハリー・ラスキン、アーサー・ウィンペリス、音楽のアドルフ・ドイチュ、撮影のジョセフ・ルッテンバーグ、編集のジョン・D・ダニング、美術のセドリック・ギボンズとダニエル・B・キャスカート、装置のエドウィン・B・ウィリス、衣裳のアイリーン、録音のダグラス・シアラーといった錚々たるメンバーが、それぞれの持ち場で最高の仕事ぶりを発揮しました。

『奥様武勇伝』は、単なる娯楽作品にとどまらない、人間模様の深みと、ハリウッド黄金期の華やかさを兼ね備えた秀作です。グリア・ガースンとウォルター・ピジョンの魅力的な演技、子役時代のエリザベス・テイラーの輝き、そして豪華スタッフ陣の技量、どれをとっても見逃せない要素となっています。この作品が、コンウェイ監督の遺作であるという事実も、映画に深みと重みを与えています。映画史に残る名作として、現在も高い評価を得ている『奥様武勇伝』は、何度観ても新しい発見がある、そんな魅力に満ち溢れた作品と言えるでしょう。

参考文献

『シネアルバム　エリザベス・テーラー』（芳賀書店、1973）
児玉数夫『MGM‐アメリカ映画黄金時代』（講談社文庫、1988）
* 筈見有弘『ハリウッド・カップルズ』（キネマ旬報社、1998）

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