奥田教朝

日本の都市計画、特にその行政と技術の発展に深く貢献した人物に奥田 教朝（おくだ のりとも）がいます。1910年に生まれ、1994年に生涯を閉じた彼は、都市計画家、都市計画官僚、そして土木技師という多様な顔を持ちました。

奥田は1910年10月10日、東京に生まれました。父は農商務省の技師として鉱山行政に携わった奥田武二郎、母は愛子（男爵関義臣の庶子）です。五人兄弟の長男であり、弟たちも医師や技師としてそれぞれの分野で活躍しました。彼の生家は、代々公職に就く者が多い家系でした。祖父の教佶は旧越後村松藩士の出身で、教育者として各地の師範学校などで校長を務めました。旧村松藩主家とも繋がりがありました。妻は宇佐美寛爾の養女えみ子です。

学業では東京帝国大学に進み、工学部土木科で学びました。1935年（昭和10年）に卒業後、内務省に入省します。戦時中は防空研究所での勤務を経験し、都市計画地方委員会では東京の都市計画に携わるなど、戦前の日本の状況下での都市計画行政に深く関わりました。この時期の経験は、後の都市計画実務や思想に大きな影響を与えたと考えられます。

戦後、日本の都市が復興と高度経済成長を迎える中、奥田はその中心で活躍します。東京都建設局では計画課長を務め、首都の復興と発展に尽力しました。その後、建設省に移り、都市局で街路課長（第3代）、そして技術参事官（初代）という重要な役職を歴任しました。これらのポストでは、日本の都市の根幹をなす街路網の整備や、都市計画における技術行政の確立に貢献したと言えるでしょう。

官僚としてのキャリアの後は、公営企業や民間へと活躍の場を広げます。帝都高速度交通営団（現在の東京地下鉄の前身の一つ）の理事として都市交通網の整備に関わり、さらに民間建設コンサルタントの草分けである三井共同建設コンサルタントに移り、代表取締役を務めました。民間においても、これまでの経験を活かし、多くの都市開発プロジェクトに関与しました。

また、専門家団体での活動も精力的に行い、社団法人建設コンサルタンツ協会や、自身も深く関わった日本都市計画学会で会長（1973年-1974年）を務めるなど、業界全体の発展や学術研究の振興にも貢献しました。その間、母校である東京大学土木工学科で非常勤講師を務めるなど、後進の育成にも力を注ぎました。

都市計画に関する専門家としての知見は、多くの著書としてもまとめられています。

『防空工学』（1942年、コロナ社）
『街路と廣場』（1944年、常磐書房）
『都市計画通論』（1973年、吉岡昭雄と共著）
『新制・道路・都市計画』（1955年、谷藤正三と共著）

これらの著作は、当時の都市計画や土木技術に関する貴重な資料となっています。

奥田教朝の業績を記念し、東京大学工学部都市工学科には「奥田教朝文庫」が設けられており、彼の残した資料や蔵書が収められています。

1994年8月7日、急性心不全により83歳でその生涯を閉じました。奥田教朝は、戦中・戦後の激動の時代において、都市計画の行政、技術、実務、教育、そして学術研究といった多岐にわたる分野で指導的な役割を果たし、現代日本の都市基盤形成に大きな足跡を残した人物と言えるでしょう。

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