奪い愛、夏

奪い愛、夏（うばいあい、なつ）

2019年8月8日より、インターネットテレビ局AbemaTVにて配信が開始された連続ドラマです。2017年にテレビ朝日で放送された『奪い愛、冬』の事実上の続編として企画されましたが、登場人物や物語の舞台設定は一新されており、完全に独立したオリジナルストーリーとして制作されています。前作でも脚本を手がけた鈴木おさむをはじめ、『奪い愛、冬』のスタッフ陣が再び集結しており、制作側はこのドラマジャンルを「クレイジー狂愛ドラマ」と称しています。

物語の舞台は、マッチングアプリを運営する企業「ラブネクスト」。作中に登場するラブネクスト社の社内シーンは、AbemaTVの本社が入るChateau Ameba内のスタジオやオープンスペースを用いて撮影されました。

あらすじ

マッチングアプリ開発会社「ラブネクスト」に勤務する桐山椿は、同じ職場で働く同僚の空野杏と秘密裏に交際していました。幸せな日々を送っていた二人でしたが、ある日、椿は自社の女社長である花園桜に突然呼び出され、「1億円で私と結婚しなさい！」という衝撃的な提案を受けます。同時期に、父親が1億円もの多額の借金を抱えている事実を知った椿は、家族を守るために苦渋の決断を下し、桜との結婚を選択します。しかし、愛する杏には真実を打ち明け、桜との結婚生活と並行して、杏との秘密の交際を続けることを選びます。この選択が、登場人物たちの複雑な感情と人間関係をさらに拗らせ、予測不能な愛憎劇へと発展していきます。

登場人物

本作には、それぞれが強烈な個性や秘密を抱えたキャラクターたちが多数登場し、物語を狂気の渦に巻き込みます。

花園桜（はなぞの さくら）
演：水野美紀
年商100億円を誇るマッチングアプリ会社「ラブネクスト」の女性社長。42歳。目的を達成するためならば手段を選ばない冷徹さと、特別な訓練により鍛え上げられた高い身体能力を持ち、成人男性をも凌ぐ実力を見せることがあります。一方で、時折、頭の中に鈴の音が聞こえる幻聴に悩まされるといった精神的な不安定さも抱えています。物語の途中、椿との激しいやり取りの中で倒れ、脳腫瘍に侵されていることが判明。成功率わずか3%という難手術を受けるも奇跡的に回復しますが、術後も幻聴が再発する描写があり、謎を残します。演じる水野美紀は、『奪い愛、冬』で演じた蘭とは異なる人物として演じつつも、もし蘭が別の人生を歩んでいたら…というパラレルワールドの存在を想定して役作りに臨んだと語っています。彼女のトレードマークともなった大きな帽子は、水野自身のアイデアから生まれたものです。

桐山椿（きりやま つばき）
演：小池徹平
ラブネクスト広報部に所属する男性社員で、元読者モデル。実家は老舗の和菓子屋を営んでいますが、経営難に陥っています。普段は恋人である杏のことを誰よりも大切に思っていますが、その愛情表現は時に独善的であり、杏のためならば他人に暴力を振るうことも全くためらいません。感情の起伏が非常に激しく、追い詰められると人目を憚らず泣き叫んでしまうこともあります。物語が進むにつれて、その行動は常軌を逸した狂気を帯びていきますが、いざという時には卑劣な手段を選べない生真面目な一面も持ち合わせています。

空野杏（そらの あんず）
演：松本まりか
ラブネクスト広報部の人気者で、花形的存在の美人広報。社内には秘密で椿と交際しています。自由をこよなく愛し、束縛されることを極端に嫌います。閉鎖的な空間に閉じ込められるとパニックに陥ってしまうほどです。一見、周囲に流されやすいように見えますが、内面には確固たる芯の強さを秘めており、自分の意見を貫きたい場面では、相手の発言に重ねるように主張を繰り返すという癖があります。椿にも秘密にしていましたが、実は過去に花園桜と恋人関係にあったバイセクシャルです。

井川瞳（いがわ ひとみ）
演：田中みな実
ラブネクスト広報部所属。社内のゴシップに敏感で、良くも悪くもミーハーな性格。空野杏の親友として振る舞っていましたが、実際には長年にわたり杏を憎んでいました。「好きだから死んで欲しい」と椿に異常な感情を向けたり、彼を誘惑しようと試みるなど、常軌を逸した行動に出ますが、これらは全て憎むべき杏を貶めるための策略でした。

土筆肇（つくし はじめ）
演：小手伸也
ラブネクストの社長秘書。サディズム・マゾヒズムにおけるマゾヒストとしての傾向を持ち、社長である桜からの「ご褒美」を得るために暗躍する存在です。密かに桜に恋愛感情を抱いていますが、叶わぬ恋として諦めています。物語において、突如として現れる神出鬼没な狂言回しのような役割を担います。

姜倫求（カン ユング）
演：テジュ
ラブネクスト広報部所属の韓国人社員。過去に何かと面倒を見てもらった桐山椿を深く慕っています。

大和学（やまと まなぶ）
演：大鶴義丹
外科医。花園桜の治療法を探して奔走する杏に対し、ある条件と引き換えに肉体関係を強要しようと持ちかけるなど、倫理観の欠如した人物です。彼自身が脳外科の専門医というわけではなく、自身の広い人脈を頼って手術を依頼する役割を担いました。後に、桐山椿と花園桜によって臀部に「変態」と彫られるという屈辱的な仕打ちを受けます。

奥川康太（おくがわ こうた）
演：三浦翔平
最終回のエピローグに登場します。彼は『奪い愛、冬』の主人公であり、花園桜を前作の登場人物である「蘭」と呼びます。これは前作ファンへのサービス的な登場と言えるでしょう。

特徴

本作は「クレイジー狂愛ドラマ」と銘打たれている通り、登場人物たちが繰り広げる常軌を逸した行動や、愛、金、欲望、裏切りといった複雑な感情が絡み合う人間関係が最大の特徴です。予測不能な展開が連続し、視聴者を飽きさせない構成となっています。水野美紀演じる花園桜を中心とした、強烈なキャラクターたちの演技合戦も見どころの一つです。

スタッフ

脚本：鈴木おさむ
監督：小松隆志（MMJ）、樹下直美（アズバーズ）
編成プロデューサー：谷口達彦（AbemaTV）
プロデューサー：小路美智子（MMJ）、伊藤正昭（MMJ）
プロジェクトマネージャー：小出亮太（AbemaTV）
音楽：沢田完
企画協力：横地郁英（テレビ朝日）、川島誠史（テレビ朝日）、浜田壮瑛（テレビ朝日）
制作プロダクション：MMJ
* 制作著作：AbemaTV

また、本作のノベライズ版として、脚本を務めた鈴木おさむによる著書『奪い愛、夏』が扶桑社より2020年1月31日に刊行されています。

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