女人道 (高野参詣道)

女人道（にょにんみち）

概要

女人道は、和歌山県高野町に位置する高野山の周囲を巡る巡礼路です。この道は、1872年に高野山の女人禁制が解除されるまで、女性が高野山を参拝するために設けられました。2016年には「紀伊山地の霊場と参詣道」として、世界遺産に追加登録され、重要な文化資源としての価値が高まっています。

高野山に向かう道は「高野七道」と呼ばれ、各道の入口には女人結界があり、女性信徒のために七つの女人堂が設置されています。女人道はこれらの女人堂を結ぶ巡礼路で、空海の修行の行脚と関連づけられています。全体の距離は約17キロメートルで、途中には舗装された区間や車道に沿った部分も含まれていますが、これらの一部は世界遺産の指定から外されています。

女人道は、町石道、三谷坂、京大坂道不動坂、黒河道といった高野参詣道と共に、すべて高野山への道ではありますが、性質的には高野山周囲を巡る道であるため、独特の特徴を持っています。また、実際には女人堂と高野七口・高野七道が必ずしも一致しているわけではありません。

各女人堂の関連性

1. 不動坂口女人堂 は京大坂道不動坂に連結。
2. 谷上女人堂には接続道がありません。
3. 大門口女人堂は町石道に関連しますが、実際の大門脇には位置していません。
4. 龍神口女人堂は町石道の正面にあり、実際には大門脇に位置しています。
5. 相ノ浦口女人堂は相ノ浦道に繋がっています。
6. 大滝口女人堂は熊野古道小辺路と関連しています。
7. 大峰口女人堂は大峰道に触れていますが、道路整備のために直接つながっていません。
8. 黒河口女人堂は黒河道に沿っています。

歩き方とルート

特定の起点はないものの、高野山の山門「大門」に接続する「大門口女人堂跡」が一般的な起点とされています。しかし利便性から、南海鋼索線（ケーブルカー）の高野山駅から不動坂口女人堂からスタートすることが多いです。本来は右回り（時計回り）が基本とされますが、実際には多くの人が左回り（反時計回り）で巡る傾向にあります。通常の巡礼ルートは以下の通りです。

1. 不動坂口女人堂
2. 谷上女人堂跡
3. 弁天岳（984m）・獄弁天
4. 大門口女人道跡
5. 大門
6. 龍神口女人堂跡
7. 相ノ浦口女人堂跡
8. 轆轤峠・大滝口女人堂跡
9. 円通律寺参道
10. 大峰口女人堂跡
11. 奥の院脇参道
12. 摩尼山
13. 楊柳山
14. 転軸山
15. 粉撞峠（子継峠）
16. 黒河口女人堂跡
17. 不動坂口女人堂

なお、大滝口から円通律寺参道の間は熊野古道小辺路と重複し、楊柳山から転軸山間の粉撞峠から黒河口女人堂跡までの区間も黒河道と重複します。

環境問題

女人道には電柱や電線が並行している部分もあり、景観や環境への影響が懸念されています。これは、高野山への電気供給のために、女人道が資材搬入の利便性を優先された結果です。

その他の利用

この道はハイキングコースや参詣道にとどまらず、女性ランナー向けのトレイルランニングレースのルートとしても活用されています。女人道は文化的な意味合いを持つ場所であり、今後の保護と有効活用が求められています。

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