女衒

女衒（ぜげん）とは

女衒とは、主に女性を遊廓や売春労働へと斡旋する仲介業者を指します。この職業は古くから存在しており、特に日本の歴史において重要な役割を果たしてきました。女衒の存在は、古代から近世を経て現代に至るまで、常に社会の裏面に潜んでいます。

業務内容

近世以前の女衒は、人買いや誘拐に関与することもありました。近世に入ると、人さらいが禁止され、女衒は貧困による娘身売りの仲介を主な業務とするようになります。表向きには年季奉公のための前借金などの証文を作成しましたが、実際には本人の自由意思に基づくものではなく、現代の価値観から見ると人身売買に近い形態でした。

女衒は通常、売買額の10%から20%を手数料として受け取ります。例として吉原では、身売り額の半分近くが女衒の手数料や交通費、新生活を始めるための費用に充てられていました。

職能と職域

女衒は、女性の見極めの技術として「鑑定の秘伝」とも言われる独自のスキルを持っていました。価格の決定には、女性の容姿や特徴が重要視され、極上、上玉、並玉、下玉などのランク付けがなされました。女衒は公的な周旋業者として、主に芸娼妓の紹介を行っていました。

広義では、もぐりの周旋業者や紹介人も女衒と呼ばれ、遊廓や岡場所において欠かせない存在でした。彼らは雇人口入や身元保証の役割を果たし、新しい娼妓を市場に送り出す重要な役割を担っていました。

歴史的背景

江戸時代、老中の松平定信は女衒を厳しく取り締まりましたが、その一方で公認・非公認の女衒が共存する状況が続きました。合法な女衒は、認可を受けて活動を続け、一方で非合法な業者も幅を効かせていました。この頃、東京では女衒が多く点在し、特に山谷地域に集中していました。

いざ明治時代に突入すると、人身売買禁止法が整備されましたが、貧困層の家庭では女衒による女性の売買が後を絶たなくなります。1920年代になると、女衒による誘拐事件が問題視され、免許制度が導入されました。この免許を得た業者は、手数料上限が設定され、警察の管理下に置かれました。しかし、悪質な業者の影響は根強く、自浄作用は有限でした。

また、戦前の時代には、日本本土だけでなく、朝鮮や台湾出身の女性が女衒を通じて売られるケースも多くありました。特に、1930年代の東北恐慌は、貧困家庭の娘の身売りを加速させ、女衒が女性を騙して都市に売り飛ばす悪質な行動が横行しました。

1950年代に入ると、未成年を対象とした悪質な仲介業者が検挙される事例が増え、その多くが女衒的な役割を果たしていました。しかし、1959年に売春防止法が施行されると、公娼制度は廃止され、女衒の多くは姿を消しました。

現代の状況

近年では、特定のイベントや撮影会での派遣要員の仲介など、一部で「現代の女衒」と見なされる行為が存在します。この動きには違法性を伴わない場合も多いものの、ヒューマントラフィッキングという言葉が用いられるようになっています。

女衒の歴史は、日本社会のさまざまな側面を反映しており、過去の問題を理解することで現代社会における課題を考えるきっかけになるでしょう。

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