奴 (刑罰)

江戸時代の刑罰「奴」

江戸時代、日本における刑罰の一つに「奴」（やっこ）があります。この制度は主に女性を対象にしており、犯罪等によって人別帳から除外され、一種の奴婢身分に転落させられることを意味します。引取りを希望する者がいれば、そのまま個人に下げ渡されることもありましたが、多くの場合は新吉原などの娼婦として勤めさせられました。

古代から日本社会には人買いや人身売買が存在し、それに伴って奴隷的な立場の人々も広く見受けられました。特に、戦国時代には乱妨取りや紛争によって多くの人が奴隷身分となる例がありました。こうした身分への転落は、犯罪や武士の家族に対する連座など、様々な要因によって引き起こされていました。

徳川幕府が成立し、時代が進むにつれて国内は安定し、戦争の影響で奴隷的身分になることは次第に少なくなりました。また、1626年に幕府が人身売買を禁止したことで、経済的な理由で奴隷的立場に置かれることも制度的に無くなっていきました。

しかし、刑罰としての奴刑は依然として残りました。1699年までの判決が記されている『御仕置裁許帳』には、売春や窃盗を犯した者、さらに家族の犯罪による連座が原因で奴刑に処せられた事例が多く見られます。この資料からも、この制度がどれほど広範囲に適用されたのかが伺えます。

一方で、公事方御定書においては、この刑が適用されるのは例外的であり、関所を男性と共に通過しようとした者に対してのみこの刑が科せられる旨の規定が示されています。このことから、奴刑の適用は減少し、他の刑罰との関係が深まったことを示唆しています。引き取り手がいない場合、対象者は昼間は牢内での洗濯作業などに従事させられ、夜間は牢獄に収容されました。

奴刑に似た制度としては、私娼に対して新吉原で三年間女郎として奉公を務めさせるものがあり、これらの女郎は「奴女郎」と呼ばれ、その地位は非常に低く扱われました。

このように、江戸時代の「奴」という制度は、犯罪に対する厳しい刑罰の一環であり、女性に対する措置として多くの制度的背景を有していました。この制度は、当時の社会構造や女性の立場、さらには人身売買に至るまで広範囲に影響を与えました。江戸時代の法律や社会風俗の中でのこのような事例は、今もなお日本の歴史を理解するための重要な要素となっています。

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