如意輪寺

如意輪寺（にょいりんじ）について

如意輪寺は、奈良県吉野郡吉野町吉野山にある浄土宗の由緒ある寺院です。山号は塔尾山であり、本尊として如意輪観音が祀られています。この寺院の特筆すべき点は本堂の背後に、後醍醐天皇の陵である塔尾陵が位置していることです。また、世泰親王の墓も境内にあります。

歴史

如意輪寺の創建は平安時代の延喜年間にさかのぼるとされ、当時は日蔵上人によって開かれたと伝えられています。南北朝時代、後醍醐天皇がこの地に行宮を定めた際、寺は天皇の勅願所とされる運命を辿りましたが、天皇はその後とうとう還京を果たせぬまま崇を迎え、寺の裏山に葬られることになります。この出来事は如意輪寺の歴史に深い影を残しました。

また、後醍醐天皇を弔うために、正平2年（1346年）には楠木正成の長男、楠木正行が四條畷の戦いに出陣するにあたり、この寺に訪れ後醍醐天皇陵に詣で、辞世の歌を詠んだことも有名です。正行はその歌を本堂の扉に刻み、その扉自体が今も寺内に保存されています。

1670年、文誉鉄牛上人により本堂が再建された際、浄土宗として新たに運営が始まりました。このように、如意輪寺は事代わりされた宗派ながらも、歴史の重厚さを備え続けているのです。

境内の見どころ

如意輪寺の境内には、多くの建物と見所があります。特に本堂である如意輪堂は、寄棟造りで檜皮葺きという美しい構造を誇ります。その他の建物として不動堂、鐘楼、薫香楼、幽香楼、庫裏、御門、御霊殿、権現堂、塔尾稲荷、庭園「二河白道の庭」、宝物殿、宝珠苑、楠公父子像（楠木正成と楠木正行の像）、報国殿、多宝塔、後醍醐天皇腰掛け石、楠正行公お手植えのモッコク（樹齢670年）などがあります。特に後醍醐天皇の墓、塔尾陵は通常の天皇陵とは異なり、北向きに造られている点が注目されます。

文化財としては、重要文化財に指定された厨子入木造蔵王権現立像や、奈良県指定有形文化財の紙本著色吉野曼荼羅、また木造阿弥陀如来立像などがあり、特に後醍醐天皇の辞世の歌が刻まれた扉は、歴史的な価値を持っています。これらの文化財は寺の宝物殿で一般公開されています。

アクセス情報

如意輪寺へのアクセスは、近鉄吉野線の吉野駅で下車後、吉野ロープウェイを利用するか、徒歩で山道を進むことになります。所要時間はおおよそ20分で、山道には「七曲がり」と呼ばれる急な坂が含まれています。特に春のシーズン中には、吉野駅から中千本公園口まで臨時バスも運行されています。

おわりに

如意輪寺は、歴史的な背景や多くの文化財を有する寺院として、訪れる人々に深い感銘を与える場所です。山の中に静かに佇むこの寺院は、観光名所としてだけでなく、精神的な癒しを求める人にもおすすめです。このように、如意輪寺は日本の歴史と文化が交差する場所であり、訪問者に独自の体験を提供しています。

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